インタビュー CARLO SERGIO SIGNORI

/ 日本人彫刻家が制作した、イタリア抽象彫刻界巨匠の /
作品を未来に伝える写真集。
イタリア人彫刻家カルロ・セルジョ・シニョーリの作品が、写真集として紹介されています。彫刻家の安部大雅さんは、イタリアでの修行中にシニョーリの奥様とその作品に出会い、大きな感銘を受けます。のちに、作品をリスト化するため、カメラマンの中村治さんとともに現地で撮影を行い、さらに東京のイタリア文化会館で彫刻写真展を開催します。そして今回、シニョーリの作品を後世に伝えたいという想いから、「ガップリ!」で写真集の制作に取り組みました。安部さんに、その経緯と想いをうかがいました。
光源は自然光とランプがひとつだけ。そこで、全身にレフ板を貼ったり、
グレーの紙を使ったりして、どうにか撮影環境を整えました。
今回制作されたのは、どのような写真集なのですか?
これは、カルロ・セルジョ・シニョーリ(Carlo Sergio Signori)というイタリアの彫刻家の作品を収録した写真集です。シニョーリは日本ではあまり知られていませんが、第二次世界大戦後に活躍したイタリアを代表する抽象彫刻家のひとりです。
シニョーリの彫刻の魅力はどのような点にあるとお考えですか?
シニョーリは、美術史でいうと抽象彫刻の第2世代にあたる、比較的初期の作家です。抽象彫刻が始まったばかりの時代の雰囲気と、イタリア人ならではの自由な感性が作品に現れていて、我々日本人にはないセンスを感じます。今見ても、天才だなと思いますね。
この写真集は、どのような経緯で作られたのですか?
僕が彫刻を学ぶためにイタリアへ渡った1998年には、シニョーリはもう亡くなっていたのですが、奥様が日本の方で、イタリア滞在中にたいへんお世話になり、そのご縁でシニョーリの作品に触れるようになりました。その後、奥様やご家族から作品をリスト化してほしいと頼まれて、カメラマンの中村治さんとともに2017年にイタリアへ行き、倉庫に眠っていたシニョーリの作品を撮影しました。それらの写真をもとに、2020年には東京のイタリア文化会館でシニョーリの彫刻写真展を開催し、そして今回、以前から計画していた写真集をようやく作ることができました。
▲イタリア文化会館で開催した彫刻写真展(撮影:石川ヨシカズさん)
イタリア文化会館での彫刻写真展は、どのような経緯で実現されたのでしょうか?
▲2020年開催の彫刻写真展の様子(撮影:石川ヨシカズさん)
▲撮影終了時の写真。安部さん(後列中央)、ご友人(両端)、シニョーリの奥様(女性左)とその妹さん(女性右)、中村さん(最前列) (撮影:中村治さん)
シニョーリの作品を撮影し終えて帰国した後、中村さんからプリントされた写真を受け取ったのですが、その美しさに圧倒され、「これはぜひ、どこかで写真展を開かなくては」と強く思いました。それで、いろいろと考えた末、イタリア文化会館へ突撃してみたんです(笑)。すると、意外にもあっさりと開催の許可をいただくことができました。とはいえ、展示にかかる費用はすべて自己負担。写真のプリント代など資金のあてがなかったため、友人が奔走してくれ、シニョーリの彫刻を購入していただくかたちで支援者を募ることになりました。その結果、なんとか資金のメドが立ち、展示の実現にこぎつけました。ただ、写真展だけでは成功が難しいのではという不安もあり、同時開催として、明治神宮で現代彫刻家31名による彫刻展も企画しました。こちらも資金集めには苦労しましたが、多くの方々のご協力をいただき、何とか開催することができました。
撮影から少し時間が経ちましたが、どうして2024年に写真集を制作しようと思われたのでしょうか?
作品リストとは別に、もう二度と撮影できないであろう貴重な写真を製本することで、シニョーリの作品を未来に残したいと思いました。最初は出版社に相談したり、いろいろと動いていたのですが、コロナ禍の影響で計画が頓挫してしまいました。その後、予算の調整なども難航し、しばらく進展がありませんでしたが、最終的に少部数製作し親しい方々に贈るかたちで、ようやく2024年に実現することができました。
カメラマンの中村治さんに撮影をお願いしたのは、どのような理由からですか?
中村治さんは、ポートレートを中心に活躍されている写真家です。中村さんが撮影した僕の友人のプロフィールがとても素晴らしかったので、その友人を通じて紹介してもらいました。いわゆる“物撮り”は中村さんの専門ではなかったのですが、僕は彫刻そのものというより、それが置かれている空間や、人の営みのなかにある風景として作品を捉えてほしいと思っていたので、お願いすることにしました。とはいえ、実際に撮影するのは作品だけなので、まずは僕が一つひとつの作品について解説し、それを共有したうえで、中村さんに撮影していただきました。僕の視点と彼の技術が交わった、そんな仕上がりになったと思います。
▲左から安部さん、カメラマンの中村さん、当時のイタリア文化会館館長のPaolo Calvettiさん
(撮影:石川ヨシカズさん)
作品を撮影する際に、特に苦労されたことはありますか?
▲撮影初日の様子(上)と撮影風景(下)(撮影:中村治さん)
2週間かけて、すべての撮影を倉庫の中で行ったのですが、現場は本当に過酷でした。全部で115作品。それらを少しずつ動かして、背景が写り込まないように調整する作業は、まるでテトリスのような作業でした。作品には手のひらにのるほど小さなものもあれば、数百キロ、1トン近い作品もあります。さすがに1トン級は動かせませんでしたが、特に重い作品は向きを変えるだけでもひと苦労で、扱いには苦戦しました。しかも、光源は自然光とランプがひとつだけ。そこで、全身にレフ板を貼ったり、グレーの紙を使ったりして、どうにか撮影環境を整えました。日本から来てくれた友人が一人と、現地のイタリア人の友人もピンポイントで手伝ってくれましたが、それでも撮影は大変でしたね。
特に支えてくださった方が、完成を迎える前に逝去されてしまったんです。
この写真集をお供えしたいという気持ちもあり、
白を基調にしたデザインにしました。
写真集を作るにあたって、「ガップリ!」を選んだ決め手は、どのようなことだったのでしょうか?
インターネットで検索して、少部数でも写真集を作れる会社をいくつか見つけました。その中で「ガップリ!」さんを選んだ決め手は、こちらの希望する仕様に対応していただけること、そしてホームページがとてもわかりやすく、料金の概算が明確だったことです。これが大きなポイントでした。そこで、「まずは一度見に行ってみよう」と、デザイナーさんと一緒に御社を訪問しました。その際に見せていただいた印刷品質が素晴らしく、何より担当の方の熱意が伝わってきたので、「ここにお願いしよう」と思いました。
装丁が白で統一されていますが、このようなデザインにされた理由を教えていただけますか?
このデザインは、デザイナーの方と相談しながら決めたのですが、基本的に販売するものではなかったこともあり、色味や華やかさはあえて排除し、できるだけシンプルなかたちがよいと考えました。また、この写真集を作るにあたって、多くの方々に支援していただきましたが、その中でも特に支えてくださった方が、完成を迎える前に逝去されてしまったんです。その方の一周忌に、この写真集をお供えしたいという気持ちもあり、白を基調にしたデザインにしました。
▲表紙も白の布クロスに、箔を使わず空押し加工でタイトルのみの仕上げに
ハードカバー製本と糸かがり綴じを採用された理由をお聞かせください。
ページ数が144ページと多かったこともあり、しっかりとした本に仕上げたいと思いました。また、将来的に販売する可能性も視野に入れ、その際に恥ずかしくない仕上がりを目指しました。サイズについても、A4判だとコピー用紙のイメージが強く、特別感が欠けると感じたので、デザイナーの方と相談してA4判より微妙に小さいサイズ(横:210mm×縦:287mm)に変更しました。僕は本を作った経験があまりないのですが、今回はプロのデザイナーを入れてきちんと作ったので、仕上がりには大変満足しています。
本文用紙に「サンシオンホワイト」を選ばれた理由は何ですか? また、本文のレイアウトに関して、見開きで右ページだけに写真を掲載したページが多く見受けられますが、その理由について教えていただけますか?
本文用紙は、いくつかの印刷サンプルを拝見した中で、「サンシオンホワイト」の黒がしっとりとした印象に映るのがいいなと思いました。撮影した作品の背景にある黒の質感が気になっていたので、そこが安っぽく見えないような用紙を選びたかったんです。本文のレイアウトについては、見開きで左右別々の作品が並ぶと、どうしても視線が分散してしまうのではないかと感じました。そこで、一つひとつの作品に集中して見てもらえるよう、右ページに写真を配置するデザインを中心に構成しました。
▲右ページに写真を配置し、左ページを無地にすることで作品を際立たせるレイアウトに
写真集が完成したときのお気持ちはいかがでしたか?
カメラマンの中村さんは、デザインなどにはあまり関わっていなかったので、もしかすると多少の不満はあったかもしれません(笑)。これまでに何冊もの写真集を手がけ、細部までこだわり抜いた素晴らしい作品を作ってこられた方なので、「もう少しこうしたかった」という部分もあったと思います。それでも、印刷の仕上がりには満足してくれたようで安心しました。僕自身は、写真集の完成度にとても満足していますし、「これでようやくシニョーリに関わる仕事が一区切りついたな」という気持ちもありました。
完成した写真集は、イタリアの関係者の方にもお届けされたのですか?
イタリアには、これから持っていきます。現在は施設に入っているシニョーリの奥様はもちろん、シニョーリの関係者や、作品の一部を管理している市役所にもお贈りします。そして、それがイタリアで出版するきっかけになればいいなと思っています。
写真集をご覧になった方からの反響などは届いていますか?
国内では、支援者や関係者、これからその道を目指す人たちに配っているのですが、とても好評です。多くの方から「どこで、どうやって作ったのか?」と質問されることが多く、印刷や製本についてもお褒めの言葉をいただいています。好意的な意味で、「本当によくこんなことしたね」とか、「アホだね」とも言われました(笑)。この写真集を通じて、僕の考えも伝えることができたかなと思います。
最後に、「ガップリ!」のサービスを利用した感想はいかがですか?
とてもよかったです。またぜひお願いしたいと思っています。この費用感で制作できるなら、僕自身の作品集ももっと気軽に出せますし、発表の場が広がることで、より多くの人に届けられるチャンスも増えると感じました。
倉庫に眠っていた作品たちが、この写真集で美しく蘇りました。
シニョーリの作品が、これから日本でも多くの人に届くことを願っています。貴重なお話をありがとうございました。
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ガップリ!で印刷・製本した作品をご紹介「ガップリ!ギャラリー」
「ガップリ!ギャラリー」では、ガップリ!で印刷・製本したお客さまの製作事例をご紹介しています。
ギャラリーでは、作品の写真だけではなく、仕様や特徴、お客さまインタビューなども掲載しています。検索機能もあり、「製本タイプ」「サイズ」「用途」「オプション加工」「業種」から絞り込んで、素早く見たい製作事例が探せます。
「ガップリ!ではどんなことができるのか過去の作品を確認したい」「本づくりのヒントが欲しい」という方には参考になると思いますので、ぜひご覧ください。
作品を未来に伝える写真集。
イタリア人彫刻家カルロ・セルジョ・シニョーリの作品が、写真集として紹介されています。彫刻家の安部大雅さんは、イタリアでの修行中にシニョーリの奥様とその作品に出会い、大きな感銘を受けます。のちに、作品をリスト化するため、カメラマンの中村治さんとともに現地で撮影を行い、さらに東京のイタリア文化会館で彫刻写真展を開催します。そして今回、シニョーリの作品を後世に伝えたいという想いから、「ガップリ!」で写真集の制作に取り組みました。安部さんに、その経緯と想いをうかがいました。
光源は自然光とランプがひとつだけ。そこで、全身にレフ板を貼ったり、
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今回制作されたのは、どのような写真集なのですか?
これは、カルロ・セルジョ・シニョーリ(Carlo Sergio Signori)というイタリアの彫刻家の作品を収録した写真集です。シニョーリは日本ではあまり知られていませんが、第二次世界大戦後に活躍したイタリアを代表する抽象彫刻家のひとりです。
シニョーリの彫刻の魅力はどのような点にあるとお考えですか?
シニョーリは、美術史でいうと抽象彫刻の第2世代にあたる、比較的初期の作家です。抽象彫刻が始まったばかりの時代の雰囲気と、イタリア人ならではの自由な感性が作品に現れていて、我々日本人にはないセンスを感じます。今見ても、天才だなと思いますね。
この写真集は、どのような経緯で作られたのですか?
僕が彫刻を学ぶためにイタリアへ渡った1998年には、シニョーリはもう亡くなっていたのですが、奥様が日本の方で、イタリア滞在中にたいへんお世話になり、そのご縁でシニョーリの作品に触れるようになりました。その後、奥様やご家族から作品をリスト化してほしいと頼まれて、カメラマンの中村治さんとともに2017年にイタリアへ行き、倉庫に眠っていたシニョーリの作品を撮影しました。それらの写真をもとに、2020年には東京のイタリア文化会館でシニョーリの彫刻写真展を開催し、そして今回、以前から計画していた写真集をようやく作ることができました。

▲イタリア文化会館で開催した彫刻写真展(撮影:石川ヨシカズさん)
イタリア文化会館での彫刻写真展は、どのような経緯で実現されたのでしょうか?

▲2020年開催の彫刻写真展の様子(撮影:石川ヨシカズさん)

▲撮影終了時の写真。安部さん(後列中央)、ご友人(両端)、シニョーリの奥様(女性左)とその妹さん(女性右)、中村さん(最前列) (撮影:中村治さん)
シニョーリの作品を撮影し終えて帰国した後、中村さんからプリントされた写真を受け取ったのですが、その美しさに圧倒され、「これはぜひ、どこかで写真展を開かなくては」と強く思いました。それで、いろいろと考えた末、イタリア文化会館へ突撃してみたんです(笑)。すると、意外にもあっさりと開催の許可をいただくことができました。とはいえ、展示にかかる費用はすべて自己負担。写真のプリント代など資金のあてがなかったため、友人が奔走してくれ、シニョーリの彫刻を購入していただくかたちで支援者を募ることになりました。その結果、なんとか資金のメドが立ち、展示の実現にこぎつけました。ただ、写真展だけでは成功が難しいのではという不安もあり、同時開催として、明治神宮で現代彫刻家31名による彫刻展も企画しました。こちらも資金集めには苦労しましたが、多くの方々のご協力をいただき、何とか開催することができました。
撮影から少し時間が経ちましたが、どうして2024年に写真集を制作しようと思われたのでしょうか?
作品リストとは別に、もう二度と撮影できないであろう貴重な写真を製本することで、シニョーリの作品を未来に残したいと思いました。最初は出版社に相談したり、いろいろと動いていたのですが、コロナ禍の影響で計画が頓挫してしまいました。その後、予算の調整なども難航し、しばらく進展がありませんでしたが、最終的に少部数製作し親しい方々に贈るかたちで、ようやく2024年に実現することができました。
カメラマンの中村治さんに撮影をお願いしたのは、どのような理由からですか?
中村治さんは、ポートレートを中心に活躍されている写真家です。中村さんが撮影した僕の友人のプロフィールがとても素晴らしかったので、その友人を通じて紹介してもらいました。いわゆる“物撮り”は中村さんの専門ではなかったのですが、僕は彫刻そのものというより、それが置かれている空間や、人の営みのなかにある風景として作品を捉えてほしいと思っていたので、お願いすることにしました。とはいえ、実際に撮影するのは作品だけなので、まずは僕が一つひとつの作品について解説し、それを共有したうえで、中村さんに撮影していただきました。僕の視点と彼の技術が交わった、そんな仕上がりになったと思います。

▲左から安部さん、カメラマンの中村さん、当時のイタリア文化会館館長のPaolo Calvettiさん
(撮影:石川ヨシカズさん)
作品を撮影する際に、特に苦労されたことはありますか?

▲撮影初日の様子(上)と撮影風景(下)(撮影:中村治さん)
2週間かけて、すべての撮影を倉庫の中で行ったのですが、現場は本当に過酷でした。全部で115作品。それらを少しずつ動かして、背景が写り込まないように調整する作業は、まるでテトリスのような作業でした。作品には手のひらにのるほど小さなものもあれば、数百キロ、1トン近い作品もあります。さすがに1トン級は動かせませんでしたが、特に重い作品は向きを変えるだけでもひと苦労で、扱いには苦戦しました。しかも、光源は自然光とランプがひとつだけ。そこで、全身にレフ板を貼ったり、グレーの紙を使ったりして、どうにか撮影環境を整えました。日本から来てくれた友人が一人と、現地のイタリア人の友人もピンポイントで手伝ってくれましたが、それでも撮影は大変でしたね。
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この写真集をお供えしたいという気持ちもあり、
白を基調にしたデザインにしました。
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装丁が白で統一されていますが、このようなデザインにされた理由を教えていただけますか?
このデザインは、デザイナーの方と相談しながら決めたのですが、基本的に販売するものではなかったこともあり、色味や華やかさはあえて排除し、できるだけシンプルなかたちがよいと考えました。また、この写真集を作るにあたって、多くの方々に支援していただきましたが、その中でも特に支えてくださった方が、完成を迎える前に逝去されてしまったんです。その方の一周忌に、この写真集をお供えしたいという気持ちもあり、白を基調にしたデザインにしました。

▲表紙も白の布クロスに、箔を使わず空押し加工でタイトルのみの仕上げに
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ページ数が144ページと多かったこともあり、しっかりとした本に仕上げたいと思いました。また、将来的に販売する可能性も視野に入れ、その際に恥ずかしくない仕上がりを目指しました。サイズについても、A4判だとコピー用紙のイメージが強く、特別感が欠けると感じたので、デザイナーの方と相談してA4判より微妙に小さいサイズ(横:210mm×縦:287mm)に変更しました。僕は本を作った経験があまりないのですが、今回はプロのデザイナーを入れてきちんと作ったので、仕上がりには大変満足しています。
本文用紙に「サンシオンホワイト」を選ばれた理由は何ですか? また、本文のレイアウトに関して、見開きで右ページだけに写真を掲載したページが多く見受けられますが、その理由について教えていただけますか?
本文用紙は、いくつかの印刷サンプルを拝見した中で、「サンシオンホワイト」の黒がしっとりとした印象に映るのがいいなと思いました。撮影した作品の背景にある黒の質感が気になっていたので、そこが安っぽく見えないような用紙を選びたかったんです。本文のレイアウトについては、見開きで左右別々の作品が並ぶと、どうしても視線が分散してしまうのではないかと感じました。そこで、一つひとつの作品に集中して見てもらえるよう、右ページに写真を配置するデザインを中心に構成しました。

▲右ページに写真を配置し、左ページを無地にすることで作品を際立たせるレイアウトに
写真集が完成したときのお気持ちはいかがでしたか?
カメラマンの中村さんは、デザインなどにはあまり関わっていなかったので、もしかすると多少の不満はあったかもしれません(笑)。これまでに何冊もの写真集を手がけ、細部までこだわり抜いた素晴らしい作品を作ってこられた方なので、「もう少しこうしたかった」という部分もあったと思います。それでも、印刷の仕上がりには満足してくれたようで安心しました。僕自身は、写真集の完成度にとても満足していますし、「これでようやくシニョーリに関わる仕事が一区切りついたな」という気持ちもありました。
完成した写真集は、イタリアの関係者の方にもお届けされたのですか?
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とてもよかったです。またぜひお願いしたいと思っています。この費用感で制作できるなら、僕自身の作品集ももっと気軽に出せますし、発表の場が広がることで、より多くの人に届けられるチャンスも増えると感じました。
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