オリジナル絵本 インタビュー
『てふ ひらり はたり』
/ テキスタイルデザインとオノマトペで見せる「オオルリアゲハ」の生態。 /
併記した中国語のオノマトペがオリエンタルな世界観も演出。
『てふ ひらり はたり』は、仕事のかたわら絵本の学校に通ったAkiko.B.Mimuraさんとデザイナーのスゲノマロさんが2人でこだわって作り上げた初の共作絵本です。「絵本は作りたいけど、絵が描けない」という問題を解決した方法や、共作の難しさなど、アーティストならではのエピソードをMimuraさんに存分に語っていただきました。
自分の伝えたいことを表現したいと絵本の学校へ通うもある欠点が判明!
それでも夢を叶えられたわけとは?
どうして絵本を作ろうと思ったのですか?
元は商業誌の編集者だったのですが、現在は、お客さまが企画されたテーマで取材・執筆したり、お預かりした原稿を体裁よくまとめる仕事をしています。ゼロから企画して作ったものを、買っていただいて評価してもらうという達成感や高揚感がなくなり、少し物足りなさを感じていました。そこで自由に創作できて、手に取ってもらいやすいものを作りたいと思ったんです。その近道が絵本でした。そんな時「ウーマンクリエイターズカレッジ絵本の学校」を見つけ、仕事のかたわら週1回、1年間通いました。でも、すぐに致命的な欠点がわかったんです。絵本の学校に入っておいて絵が描けない!
一方で、当時勤めていた仕事や絵本の学校とは関係なく、紙で伝えることを仕事にしたいと思い、地元・福島の銀行が主催する起業イベントに参加したんです。その時銀行の担当者さんに「Mimuraさんがやりたいことに近いかも」とスゲノさんを紹介してもらいました。はじめて会った時スゲノさんに『てふ、ひらり、はたり』の企画を見せたところ、快くOKしてくれたので、これで「企画は浮かぶ、文章も書ける。でも、絵とデザインはできない」という問題が一気に解決したんです。
スゲノさんのデザインを見た感想は?
お会いする前からInstagramでアップされている作品が「めちゃくちゃかわいい!」と思っていました。個展のDMも凝ったデザインですごくオシャレ! 「この人、デザインやっている人だな」ってすぐに分かりました。
「ガップリ!の絵本」は少部数で作れるのに、形も用紙も選べるし、
見本刷りで色を確認できてすごくいい!
「ガップリ!の絵本」を選んだ理由や経緯を教えてください。
2人の展示会をするにあたり「以前、イベント用に作った冊子を立派なものに作り直そう!」ということになり、上製本を少部数でも作ってくれる会社を探し、「ガップリ!の絵本」さんにお願いすることにしました。展示会場が渋谷だったので、できるだけいいものを見せたかったんです。最初のイベントの際は、少部数できちんと製本された絵本ができるサービスを見つけられなくて、フォトブックで作りました。ただ、スゲノさんの表現は色がすごく大事なのに、仕上がりの色が違う。それに対し「ガップリ!の絵本」さんは、少部数で作れるのに、オプションで形もページ数も、用紙も選べるし、見本刷りで色味も確認できる! そういう理由で決めました。
なぜオノマトペだったのでしょうか? アイデアはどこから?
父の介護をしていた時、何気なく発したオノマトペ(注1)で父が笑ってくれたんです。年齢問わず理解できる“オノマトペの本”があったらいいかも? と思いつきました。ただ、企画は大人向けの内容で、その方がスゲノさんの絵の世界観にも合うなと思って。それで2人が好きな“蝶”をモチーフに、卵から孵化して羽ばたくまでの成長の過程をオノマトペで作ることにしました。そして、この時期に絵本の学校の仲間とイベントの企画も進めていたんです。イベントのテーマは「オノマトペ」に決めました。
(注1)擬音語・擬声語・擬態語とも言われ、音・声、物事の状態や動きを象徴的な音に表した語
オノマトペに絵ではなくテキスタイルデザインを選んだ理由は?
スゲノさんの個展で見たテキスタイル(アパレル関連の編物・不織布・布地・糸のこと)のハンカチがすごく美しくて。スゲノさんは器用な方で、アクリルでも水彩でも描けるし、造形物、アクセサリー、雑貨までいろんなものを作られます。私が好きなタッチが水彩で、にじみもキレイに出すからなぁと迷っていたらスゲノさんが「テキスタイルで行きましょう!」って言ってくれました。アーティストさん本人が描きたいと思う手法で描いてもらうのが一番ですよね。
同郷というだけで世代も境遇も違う人と、ほぼ初対面での共同作業。
戸惑うこともあったけど、汲み取ってくれて感謝しています。
一番苦労した点は何ですか?
今回モチーフの“オオルリアゲハ”って、雨上がりにミカンの木に卵を産み付けるんです。生涯で約200個の卵を産むと言われていて、そのうち1個孵化すればいいくらいの割合。その生態に合うデザインにしたくて、卵、毛虫、さなぎ……と成長するごとにページに現れる個体数が減るようなデザインをお願いしました。色や配置など、大幅に変更をお願いしたページもありました。布ならいいけれど、本としては「ちょっと違うな」という感覚、たとえばお話の流れでテイストが違って見えたり、デジタル要素が強かったり、のような。スゲノさんのアーティストとしての感性や意欲を尊重しつつ、変えてもらうようお願いするのが難しかったです。自分で絵が描けないから感覚でしか伝えられない。苦労をかけたなと思いますが、ちゃんと汲み取ってくれて、仕上げてくださったのでとても感謝しています!
最終的に絵本だけではなく、布で見せることを考えると難しいですよね?
そうなんです! 布にすると全く違うから、本とは同じ色にならないんですよ。フォトブックで作っていた時も色で苦労したので「絵本は絵本の色でいい」と布と紙を別物と割り切りました。スゲノさんも「MimuraさんがOKだったらいいです」と任せてくださったので、私が色校をチェックしました。
他にも難しかった点はありますか?
はじめての共作で、その相手は人から紹介された方。失礼があってはいけないし、年下の女性だったということもあり、距離感というか、コミュニケーションに悩みました。ただ、初めてお会いしたときから、これからもこの関係性を大切にしたいと思えるお人柄だったんですね。なので、少しの言葉のかけ違いで誤解が生まれないように、本当に相談したい大事なことはメールではなく電話でお伝えするように心がけました。
この絵本に中国語を併記された理由を教えていただけますか?
オノマトペの原点はフランス語で、2人ともフランスに憧れがあったので(笑)、最初はフランス語を入れたいと考えていました。そんな中「喵ミャオ」(中国語における猫の鳴き声のオノマトペ)という可愛い文字と出会ったんです。しかも、中国語には「ひらひら」「しとしと」「ぽたぽた」など、日本語と似たオノマトペ表現があると知って、中国語の対訳なら漢字だから何となくわかるし、フランス語よりもなじみがあるので安心感がある。スゲノさんに相談したら「いいんじゃない?」とOKをもらえたので、中国語を入れることにしました。本来だったら、“ピンイン”(中国語の音節を音素文字に分け、アルファベットの組み合わせで表せるようにした発音表記体系)も入れたかったんですが、言葉とテキスタイルがごちゃごちゃしそうだったので、中国語はデザインとして割り切って、原文しか入れませんでした。その後、絵本を作ることになって、あとがき部分に訳文を載せられるようになったので、翻訳に協力してくださった、友だちとその中国語の先生のピンインつきの原文を掲載しました。
「ガップリ!の絵本」の豊富なオプションで
こだわりを詰め込んだ作品は大好評!
目の前で購入してくれるお客さまを見てまた作りたいなと思えました。
こだわった点があれば教えてください。
料金は高くなるけど、形にはこだわって正方形にしました。紙は質感が良くて、厚みがあって、目に優しい白過ぎないものを選びました。あと綴じ方も「絶対糸かがりがいい!」って譲れませんでした。唯一「これでよかったのかな?」と思う点があるとしたら、見返し用紙かな。スゲノさんと相談したけど答えが出ない。選択肢の多さゆえの贅沢な悩みですよね。最初、無難に黒や赤を考えたんですけど、この「マンゴー」という名前の用紙を見つけて「名前がいい、オリエンタルっぽいからこれにしよう!」ってことで決めたんです(笑)。
絵本ができた時の感想は?
実はこの本、展示会の前日にギリギリでできあがったんです。だから、作品の良し悪しよりもとにかく「間に合わせてくれてありがとう!」って感謝しました。完成した本を展示会で、目の前で手に取って見てくれる方がいて、しかも買ってくれる人がいる。「私たちを知らないのに買ってくれる人がいる!」って本当に嬉しかったです。
展示会は盛況でしたか?
2人とも普段はフルタイムで仕事があり、常駐できなかったので、パン屋さん(店内ギャラリー)のオーナーさんから、手に取ったり、購入いただいたお客さまのお話を教えていただきました。渋谷という場所柄、目の肥えたお客さまも多かったと思いますが「テンポのよい言葉が心地よかったです。中国語もいい響きですね」「テキスタイルデザインの鮮やかな色とパターンが、言葉(オノマトペ)と組み合わさると、こんなにもリズミカルになるんですね!」「やわらかい言葉に対してインパクトのある絵が興味深いなと思いました」などのコメントをいただき光栄でした。
展示会のあと、絵本はどこかで販売されていますか?
「ノミガワブックスタジオ」という、スペース貸しの小さい本棚で、本棚のオーナーさんにお声がけいただき、短期間ですが販売していました。ここは「コミュニティスペースとして本がツールになれば」という交流する場所です。地元に根付く、素敵な取組みですよね。現在はスゲノさんのホームページで販売しています。
今後は、2人でなら変わった製本や特殊加工にチャレンジしたい。
個人的には、故郷に恩返しできるような作品を作りたい。
今後、作ってみたいものは?
超豪華本! 実はこの前「また本作りたいね」って話になって「箔押しだ! 箱入りだ!」と盛りだくさんで見積もりをとったら1冊7000円を超えちゃって、それはさすがに諦めました(笑)。でも企画としては残っていて、自分たちで製本するから表紙と中身だけお願いするとか、色々考えています。それから、2人とも変わった製本や特殊加工に憧れがあるので、ドイツ製本やフランス製本などの変わった製本をやってみたい。「表紙はアートとして美しい、読んでみたらテーマもいい!」みたいな。
個人的には、原発事故の時に何もできなかった思いを物語にしたいです。大学進学の際に上京して、そのまま東京で就職しちゃったので「故郷を離れてしまった」という罪悪感が少なからずあります。いま、放射線が日本の医療や技術でどのようにどのように利用されているのかということを仕事を通じて知る機会があるので、そういった科学の側面と人の想いを両方伝えられるような、故郷に恩返しできる作品を作りたいと思っています。
最後に「ガップリ!の絵本」サービスの感想をお願いします。
満足しています! とにかくオプションが豪華! 質感も発色も素晴らしいし、色校正までできる。こんなサービスは他にないと思います! ありがとうございました。
次々とアイデアが湧き出るMimuraさん。これからの作品も楽しみにしています!
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- うずまきぐるぐる
- catable(きゃっとえいぶる) 様
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- MUGI BOOK PROJECT 様
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- 女子美術大学 保育美術研究会 代表 細矢智寛 様
- あこがれ世界の音楽室1 海底より
- 作/橘山まさお様
絵/sea-no様
- おもいはめぐる
- sakko様
- さると木
- 文/なかいずみ とうま様
絵/ハセガワ直子様
- うちのママってヘンなんだ
- あずきみるく様
- おはなしのもり
- 任意団体「デフシル-DEAF SHIRU-」様
- ひとつの森
- ハシケン様
- TASCぎふコラボ展vol.8 虹色の木の下で
- 作/丹賀澤賢様
絵/naomi様・金田典子様
- とのととどまる。~殿 ニューヨークへ行く~
- 作/とどまる様
絵/あきばたまみ様・かんのあき様
- かぞくです
- 作/鈴木まど佳様・弓﨑也美様・Jennifer Martin様
絵/AKITO HOSHINO様
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- 株式会社blue dreamプランニング ずむずむ®絵本
真下直子様
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- 作/くりくり様 絵/ふっかー様
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- SAKURA様
- たのしみながら少しづつ
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- ここに生まれてきたんだよ
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- やぎちゃんと秘密の線香
- 八木 宏幸様
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- 品川女子学院様
- アイリス あてまの森のニホンリス
- あてま森と水辺の教室ポポラ様
ガップリ!の絵本ギャラリー
お客さまが上製本(ハードカバー仕上げ)で製作したオリジナル絵本を一部ご紹介しています。
オリジナル絵本 無料サンプルプレゼント中!
ガップリ!の絵本では、初めて絵本を作成する方でも安心してご注文いただけるよう、オリジナル絵本の無料サンプルをプレゼントしています!
併記した中国語のオノマトペがオリエンタルな世界観も演出。
『てふ ひらり はたり』は、仕事のかたわら絵本の学校に通ったAkiko.B.Mimuraさんとデザイナーのスゲノマロさんが2人でこだわって作り上げた初の共作絵本です。「絵本は作りたいけど、絵が描けない」という問題を解決した方法や、共作の難しさなど、アーティストならではのエピソードをMimuraさんに存分に語っていただきました。
自分の伝えたいことを表現したいと絵本の学校へ通うもある欠点が判明!
それでも夢を叶えられたわけとは?
どうして絵本を作ろうと思ったのですか?
元は商業誌の編集者だったのですが、現在は、お客さまが企画されたテーマで取材・執筆したり、お預かりした原稿を体裁よくまとめる仕事をしています。ゼロから企画して作ったものを、買っていただいて評価してもらうという達成感や高揚感がなくなり、少し物足りなさを感じていました。そこで自由に創作できて、手に取ってもらいやすいものを作りたいと思ったんです。その近道が絵本でした。そんな時「ウーマンクリエイターズカレッジ絵本の学校」を見つけ、仕事のかたわら週1回、1年間通いました。でも、すぐに致命的な欠点がわかったんです。絵本の学校に入っておいて絵が描けない!
一方で、当時勤めていた仕事や絵本の学校とは関係なく、紙で伝えることを仕事にしたいと思い、地元・福島の銀行が主催する起業イベントに参加したんです。その時銀行の担当者さんに「Mimuraさんがやりたいことに近いかも」とスゲノさんを紹介してもらいました。はじめて会った時スゲノさんに『てふ、ひらり、はたり』の企画を見せたところ、快くOKしてくれたので、これで「企画は浮かぶ、文章も書ける。でも、絵とデザインはできない」という問題が一気に解決したんです。
スゲノさんのデザインを見た感想は?
お会いする前からInstagramでアップされている作品が「めちゃくちゃかわいい!」と思っていました。個展のDMも凝ったデザインですごくオシャレ! 「この人、デザインやっている人だな」ってすぐに分かりました。
「ガップリ!の絵本」は少部数で作れるのに、形も用紙も選べるし、
見本刷りで色を確認できてすごくいい!
「ガップリ!の絵本」を選んだ理由や経緯を教えてください。
2人の展示会をするにあたり「以前、イベント用に作った冊子を立派なものに作り直そう!」ということになり、上製本を少部数でも作ってくれる会社を探し、「ガップリ!の絵本」さんにお願いすることにしました。展示会場が渋谷だったので、できるだけいいものを見せたかったんです。最初のイベントの際は、少部数できちんと製本された絵本ができるサービスを見つけられなくて、フォトブックで作りました。ただ、スゲノさんの表現は色がすごく大事なのに、仕上がりの色が違う。それに対し「ガップリ!の絵本」さんは、少部数で作れるのに、オプションで形もページ数も、用紙も選べるし、見本刷りで色味も確認できる! そういう理由で決めました。
なぜオノマトペだったのでしょうか? アイデアはどこから?
父の介護をしていた時、何気なく発したオノマトペ(注1)で父が笑ってくれたんです。年齢問わず理解できる“オノマトペの本”があったらいいかも? と思いつきました。ただ、企画は大人向けの内容で、その方がスゲノさんの絵の世界観にも合うなと思って。それで2人が好きな“蝶”をモチーフに、卵から孵化して羽ばたくまでの成長の過程をオノマトペで作ることにしました。そして、この時期に絵本の学校の仲間とイベントの企画も進めていたんです。イベントのテーマは「オノマトペ」に決めました。
(注1)擬音語・擬声語・擬態語とも言われ、音・声、物事の状態や動きを象徴的な音に表した語
オノマトペに絵ではなくテキスタイルデザインを選んだ理由は?
スゲノさんの個展で見たテキスタイル(アパレル関連の編物・不織布・布地・糸のこと)のハンカチがすごく美しくて。スゲノさんは器用な方で、アクリルでも水彩でも描けるし、造形物、アクセサリー、雑貨までいろんなものを作られます。私が好きなタッチが水彩で、にじみもキレイに出すからなぁと迷っていたらスゲノさんが「テキスタイルで行きましょう!」って言ってくれました。アーティストさん本人が描きたいと思う手法で描いてもらうのが一番ですよね。
同郷というだけで世代も境遇も違う人と、ほぼ初対面での共同作業。
戸惑うこともあったけど、汲み取ってくれて感謝しています。
一番苦労した点は何ですか?
今回モチーフの“オオルリアゲハ”って、雨上がりにミカンの木に卵を産み付けるんです。生涯で約200個の卵を産むと言われていて、そのうち1個孵化すればいいくらいの割合。その生態に合うデザインにしたくて、卵、毛虫、さなぎ……と成長するごとにページに現れる個体数が減るようなデザインをお願いしました。色や配置など、大幅に変更をお願いしたページもありました。布ならいいけれど、本としては「ちょっと違うな」という感覚、たとえばお話の流れでテイストが違って見えたり、デジタル要素が強かったり、のような。スゲノさんのアーティストとしての感性や意欲を尊重しつつ、変えてもらうようお願いするのが難しかったです。自分で絵が描けないから感覚でしか伝えられない。苦労をかけたなと思いますが、ちゃんと汲み取ってくれて、仕上げてくださったのでとても感謝しています!
最終的に絵本だけではなく、布で見せることを考えると難しいですよね?
そうなんです! 布にすると全く違うから、本とは同じ色にならないんですよ。フォトブックで作っていた時も色で苦労したので「絵本は絵本の色でいい」と布と紙を別物と割り切りました。スゲノさんも「MimuraさんがOKだったらいいです」と任せてくださったので、私が色校をチェックしました。
他にも難しかった点はありますか?
はじめての共作で、その相手は人から紹介された方。失礼があってはいけないし、年下の女性だったということもあり、距離感というか、コミュニケーションに悩みました。ただ、初めてお会いしたときから、これからもこの関係性を大切にしたいと思えるお人柄だったんですね。なので、少しの言葉のかけ違いで誤解が生まれないように、本当に相談したい大事なことはメールではなく電話でお伝えするように心がけました。
この絵本に中国語を併記された理由を教えていただけますか?
オノマトペの原点はフランス語で、2人ともフランスに憧れがあったので(笑)、最初はフランス語を入れたいと考えていました。そんな中「喵ミャオ」(中国語における猫の鳴き声のオノマトペ)という可愛い文字と出会ったんです。しかも、中国語には「ひらひら」「しとしと」「ぽたぽた」など、日本語と似たオノマトペ表現があると知って、中国語の対訳なら漢字だから何となくわかるし、フランス語よりもなじみがあるので安心感がある。スゲノさんに相談したら「いいんじゃない?」とOKをもらえたので、中国語を入れることにしました。本来だったら、“ピンイン”(中国語の音節を音素文字に分け、アルファベットの組み合わせで表せるようにした発音表記体系)も入れたかったんですが、言葉とテキスタイルがごちゃごちゃしそうだったので、中国語はデザインとして割り切って、原文しか入れませんでした。その後、絵本を作ることになって、あとがき部分に訳文を載せられるようになったので、翻訳に協力してくださった、友だちとその中国語の先生のピンインつきの原文を掲載しました。
「ガップリ!の絵本」の豊富なオプションで
こだわりを詰め込んだ作品は大好評!
目の前で購入してくれるお客さまを見てまた作りたいなと思えました。
こだわった点があれば教えてください。
料金は高くなるけど、形にはこだわって正方形にしました。紙は質感が良くて、厚みがあって、目に優しい白過ぎないものを選びました。あと綴じ方も「絶対糸かがりがいい!」って譲れませんでした。唯一「これでよかったのかな?」と思う点があるとしたら、見返し用紙かな。スゲノさんと相談したけど答えが出ない。選択肢の多さゆえの贅沢な悩みですよね。最初、無難に黒や赤を考えたんですけど、この「マンゴー」という名前の用紙を見つけて「名前がいい、オリエンタルっぽいからこれにしよう!」ってことで決めたんです(笑)。
絵本ができた時の感想は?
実はこの本、展示会の前日にギリギリでできあがったんです。だから、作品の良し悪しよりもとにかく「間に合わせてくれてありがとう!」って感謝しました。完成した本を展示会で、目の前で手に取って見てくれる方がいて、しかも買ってくれる人がいる。「私たちを知らないのに買ってくれる人がいる!」って本当に嬉しかったです。
展示会は盛況でしたか?
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展示会のあと、絵本はどこかで販売されていますか?
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今後は、2人でなら変わった製本や特殊加工にチャレンジしたい。
個人的には、故郷に恩返しできるような作品を作りたい。
今後、作ってみたいものは?
超豪華本! 実はこの前「また本作りたいね」って話になって「箔押しだ! 箱入りだ!」と盛りだくさんで見積もりをとったら1冊7000円を超えちゃって、それはさすがに諦めました(笑)。でも企画としては残っていて、自分たちで製本するから表紙と中身だけお願いするとか、色々考えています。それから、2人とも変わった製本や特殊加工に憧れがあるので、ドイツ製本やフランス製本などの変わった製本をやってみたい。「表紙はアートとして美しい、読んでみたらテーマもいい!」みたいな。
個人的には、原発事故の時に何もできなかった思いを物語にしたいです。大学進学の際に上京して、そのまま東京で就職しちゃったので「故郷を離れてしまった」という罪悪感が少なからずあります。いま、放射線が日本の医療や技術でどのようにどのように利用されているのかということを仕事を通じて知る機会があるので、そういった科学の側面と人の想いを両方伝えられるような、故郷に恩返しできる作品を作りたいと思っています。
最後に「ガップリ!の絵本」サービスの感想をお願いします。
満足しています! とにかくオプションが豪華! 質感も発色も素晴らしいし、色校正までできる。こんなサービスは他にないと思います! ありがとうございました。
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