インタビュー ART BOOK
『Someday,Somewhere,Someone』

/ 「自分の世界観を形にして残したい」という想いから生まれた /
スタイリッシュなアートブック。
スタイリストとして活躍する吉村結生さんの「自分の世界観を形にして残したい」という想いから制作されたアートブックで、完成後には展示会が開かれ、多くのファンを集めました。B6判というコンパクトなサイズながら、グレーの布貼りのハードカバーに黒の箔押しでタイトルが印字されており、ページをめくると写真と英字テキストによる独特の世界が展開していきます。ブックデザイナーとして制作に携わった小川智子さんにお話をうかがいました。
写真を見せてもらった時に、どれも吉村さんらしい世界観があって、
とても素敵なものだったので、美しいものができ上がるだろうと思いました。
小川さんはふだん、どのようなお仕事をされているのですか。
ふだんはグラフィックデザイナーやイラストレーターとして活動していて、おもに広告やパンフレットをデザインする仕事をしています。この本の著者であるスタイリストの吉村結生さんは雑誌の仕事関係で出会った以前からの知り合いです。今回、ご自身がスタイリングやコンセプト出しをされた写真、アートワーク、手書き文字を入れた作品集を作りたいということで、直接ブックデザインのご依頼を受けました。
吉村さんは、どのような想いでこの本を作ろうと考えられたのでしょうか。
吉村さんは、以前から自分の世界観を形にして残したいとおっしゃっていました。ふだんのスタイリストの仕事は、依頼が来たものに対してのアウトプットであり、自分の世界観を表現するのとは違います。私はイラストレーターとして作品を描き、何年かに一回、展示したりしているのですが、吉村さんもご自身からの発信する形を考えられていたのかと思います。
今回のアートブック制作のお話を聞いた時は、どのように思われましたか。
実は、吉村さんは本を作ると決めるずっと前から、フォトグラファーの方にお願いしてご自身の表現した世界を撮ってもらっていました。それで、いつかそれを形にしたいと思っていたそうです。その写真を見せてもらった時に、どれも吉村さんらしい世界観があって、とても素敵なものだったので、展示にせよ、本にせよ、カードのようなかたちでも、美しいものができ上がるだろうと思いました。
写真は撮りためていらっしゃったんですね。今回の小川さんの役割は、本に掲載するデータを受け取って、デザインして、印刷会社を決めるといったところでしょうか。
はい。この本における私の役割は、いわゆるブックデザイナーに当たります。文字の書体なども吉村さんに確認してもらいながら、基本は私が選びました。とても信頼していただいて、選んだものにNGが出ることはほぼなかったのですが、自分のなかで迷った時だけ2択でご提案しどちらかを選んでいただいたりしました。
「ガップリ!」を選んでいただいたのは、どのような理由からですか。
本のデザインを進めていくなかで、B6判のクロス貼りハードカバーで束幅(本の厚みの寸法)15ミリと決まったのですが、私がふだん仕事でお願いしている印刷会社ではどこもそのような仕様の製本をやっておらず、一から探すことになりました。部数も初版はそれほど多くなかったため、数量的にも断られる会社が多かったです。印刷会社がなかなか見つからなかったのですが、吉村さんは時間がいくらかかってもよいので、この仕様でやりたいとおっしゃっていました。「ガップリ!」さんはネットで内容を見てすぐに資料を取り寄せました。無料の見本帳がたくさんあり、見積りも詳細でわかりやすく、迅速に対応していただいたので製作をお願いしたいと思いました。また、もし校正を見に行くとなった時に、会社がすぐ行けるところにあるのもよかったです。
「ガップリ!」においでになって、見本をいろいろとご覧になられたそうですね。
▲吉村さんのイメージに合う柔らかいグレーの表紙布クロス
ハードカバーの表紙に貼りたいグレーの生地が、「ガップリ!」さんの見本のなかにはなかったのでご相談差し上げたら、オプションでほかの生地も選べるとのことで、吉村さんと一緒に実物の生地を見にうかがいました。吉村さんは、たくさんの種類のなかから選べたことがとてもうれしかったようです。結果としてイメージにピッタリなグレーがみつかり、でき上がってからも、すごく喜んでいらっしゃいました。
ふつうはページ数や紙の質などを先に決めますが、
今回は束幅が先に決まりました。
そういったこだわりは私にはない感覚で、
その発想はおもしろいなと思いました。
制作するうえで参考にされたものはあったのでしょうか。
吉村さんが作りたい本のイメージはうかがっていたので、大型書店に二人で行って、いろいろな本を参考にしながら、本の厚さや、表紙に貼る布はどういう生地がよいかなどをお聞きし、イメージを具体化していきました。それを本に限りなく反映させて、ほとんど100%のできに仕上がったという感じです。
はじめから本の束幅を決めて制作されたのはどうしてですか。
ふつうはページ数や紙の質などを先に決めますが、今回は束幅が先に決まりました。吉村さんは薄くて小さいのは嫌で、自立するくらいの厚みがよいということで、15~18ミリくらいの束幅になりました。そういったこだわりは私にはない感覚で、その発想はおもしろいなと思いました。吉村さんには製本のイメージはもちろん、「洋書のような」「部屋に飾りたくなるような」「旅に連れて行きたくなるような」といった雰囲気のイメージも強くありましたので、その辺りにも気を使いなるべくイメージ通りになるように進めました。とくにグレーのクロスの色味や見返しのグレイッシュで品のあるピンク色は、これだ!と思うものがセレクトできてよかったです。
▲部屋にインテリアとしても飾りたくなる製本の仕上がり
グレーのクロスを貼った表紙に、黒の箔押しでタイトルを入れたのも素敵ですね。
最初に本屋さんに行った時、吉村さんは箔押しの本にとても惹かれていました。ただ、タイトルや名前は、プロダクトとしてはさり気なくあってほしいし、ユニセックスな感じにしてほしいということだったので、箔押しの色は黒にして、文字はギリギリ小さめに、シンプルに、名前も「yui y」にしました。
▲背表紙に黒の箔押しで入れたタイトルと製作者名
内容は4章に分かれていますが、構成はどのように決められたのでしょうか。
最初に写真データをいただいて、自分のほうで何も聞かずに1、2、3、4と分けたレイアウトイメージを作りました。写真は何年かに分けて撮りためたものなのですが、たまたま色味やイメージなどで分けた章が、ちゃんと時系列に場所や時間で分けられてレイアウトしていたようで驚きました。私の感覚で選んで、そこから入れ替えたりしてもらえばいいかと思ったのですが、ほとんど入れ替えなしで大丈夫でした。
吉村さんの思い描いたイメージどおりの、
たたずまいが美しい本に仕上がったなあと感じました。
一般の書籍制作の校正とは違って、「納品前サンプル」という本の形をしたものでの色校正はいかがでしたか。
私は製本してない状態の校正紙でも、トンボがついていれば仕上がりがイメージできます。ただ、吉村さんにとってははじめてのことですし、余白のイメージがわかりにくいかと思い、色校正の時にはどうしようかと考えていました。そうしたら、納品前サンプルが本のような状態で届き、こちらで手を加えるようなことがなかったのでとても助かりました。吉村さんも完成品に近い形で確認できたので、最終的な仕上がりイメージがわいたようです。
本が実際にでき上がった時は、どんなご感想でしたか。
自画自賛じゃないですが、吉村さんの思い描いたイメージどおりの、たたずまいが美しい本に仕上がったなぁと感じました。シンプルで上品、ユニセックスな感じもイメージどおりです。表紙のクロスもサンプルで触れていましたが、実際の製本の触り心地は抜群でした。本文に関しては、全4章をグレーの微妙な色味で分けており、これがきちんと出るのかが心配だったのですが、絶妙に出ていたので思わずガッツポーズをしてしまいました。写真の多いアートブックでしたので、色の出方もきれいで安心したのを覚えています。
ご自身の作品とは違うプレッシャーもおありだったのでしょうね。クライアントの吉村さんの反応はいかがでしたか。
スタイリストをされていて、センスのある方なので、実物を見た時にどうなるかと思っていたのですが、とても喜んでくれていたので、ああ、よかったとホッとしました。
完成した本はどのように活用していらっしゃるのですか。
まず、出版にともなう展示会をし、その際に本の販売もしました。展示会は昨年(2022年)11月に、東京の世田谷区代田の「LAITON(レトン)」というギャラリーで3日間行いました。東京近辺にいるたくさんの吉村さんのファンの方たちにお越しいただいたほか、吉村さんの地元の名古屋からいらっしゃった方もいました。展示後は、吉村さんがお世話になっているおしゃれなセレクトショップさんなどから、自店で取り扱いたいとお声をかけていただいたそうで、そういう本のイメージに合った店舗に置いて販売してもらっているようです。SNSなどで、購入された方が本を飾ってくださっている写真を見ると、大事にしてもらえているのがわかってとてもうれしくなります。吉村さんも、とても喜んでおられました。
▲ギャラリースペース「LATION」で行ったアートブックの展示会
展示会場では、どのようなお声をいただきましたか。
吉村さんの持っている世界観がギャラリーの雰囲気にとても合っていて、すごく癒されたとか、コロナ禍でギャラリーに行くのを控えていたこともあって、久しぶりにすごくいいものを観たというご感想をいただきました。本も来場した方のほとんどが購入されていかれました。
▲展示会の内装とディスプレイ
小川さんはブックデザイナーとして、今後何か作りたいものはございますか。
この本自体はすごく好評で、プロダクトとしても、とてもよいものができたと思いますし、吉村さんもシリーズ化したいとおっしゃっています。私としては、今回この小さいサイズでこのような素晴らしい作品を作れたことが経験としてもうれしくて、今後、同じようなかたちの提案ができますし、それでほかの方とも本を作れたらおもしろいなと思いました。本当は自分の本も作りたいのですが、なかなか時間がとれません。でも、もし作るとしたら、やはり自分自身ですべて行うのではなく、誰かに本の制作をお願いして、そこで何かしらの化学反応が起こるのを楽しんでみたいです。あと、私は文房具、なかでも方眼ノートが大好きなので、「ガップリ!」さんの姉妹サイト「書きま帳+」のオリジナルノートを利用して、自分の好きなサイズの方眼ノートを出すのもいいなと思いました。
最後に、「ガップリ!」をご利用になられた感想はいかがでしたでしょうか。
最初の資料請求や見積りから、すべて迅速で、ていねいで、とても安心して作業を進めることができました。色校正も実寸にカットされてページ順に束ねられていたので、印刷物の校正に慣れていない吉村さんもスムーズに確認できたようです。この時の校正紙は展示でも使わせていただきました。
▲アートブックの校正紙を展示会に並べて活用
吉村さんがイメージしたとおりの、部屋に飾ってもいいし、旅に連れて行ってもいい、素敵な作品集ですね。
制作に携わったみなさんの感性が伝わってくる一冊だと思います。お話、ありがとうございました。
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ガップリ!で印刷・製本した作品をご紹介「ガップリ!ギャラリー」
「ガップリ!ギャラリー」では、ガップリ!で印刷・製本したお客さまの製作事例をご紹介しています。
ギャラリーでは、作品の写真だけではなく、仕様や特徴、お客さまインタビューなども掲載しています。検索機能もあり、「製本タイプ」「サイズ」「用途」「オプション加工」「業種」から絞り込んで、素早く見たい製作事例が探せます。
「ガップリ!ではどんなことができるのか過去の作品を確認したい」「本づくりのヒントが欲しい」という方には参考になると思いますので、ぜひご覧ください。
スタイリッシュなアートブック。
スタイリストとして活躍する吉村結生さんの「自分の世界観を形にして残したい」という想いから制作されたアートブックで、完成後には展示会が開かれ、多くのファンを集めました。B6判というコンパクトなサイズながら、グレーの布貼りのハードカバーに黒の箔押しでタイトルが印字されており、ページをめくると写真と英字テキストによる独特の世界が展開していきます。ブックデザイナーとして制作に携わった小川智子さんにお話をうかがいました。
写真を見せてもらった時に、どれも吉村さんらしい世界観があって、
とても素敵なものだったので、美しいものができ上がるだろうと思いました。
小川さんはふだん、どのようなお仕事をされているのですか。
ふだんはグラフィックデザイナーやイラストレーターとして活動していて、おもに広告やパンフレットをデザインする仕事をしています。この本の著者であるスタイリストの吉村結生さんは雑誌の仕事関係で出会った以前からの知り合いです。今回、ご自身がスタイリングやコンセプト出しをされた写真、アートワーク、手書き文字を入れた作品集を作りたいということで、直接ブックデザインのご依頼を受けました。
吉村さんは、どのような想いでこの本を作ろうと考えられたのでしょうか。
吉村さんは、以前から自分の世界観を形にして残したいとおっしゃっていました。ふだんのスタイリストの仕事は、依頼が来たものに対してのアウトプットであり、自分の世界観を表現するのとは違います。私はイラストレーターとして作品を描き、何年かに一回、展示したりしているのですが、吉村さんもご自身からの発信する形を考えられていたのかと思います。
今回のアートブック制作のお話を聞いた時は、どのように思われましたか。
実は、吉村さんは本を作ると決めるずっと前から、フォトグラファーの方にお願いしてご自身の表現した世界を撮ってもらっていました。それで、いつかそれを形にしたいと思っていたそうです。その写真を見せてもらった時に、どれも吉村さんらしい世界観があって、とても素敵なものだったので、展示にせよ、本にせよ、カードのようなかたちでも、美しいものができ上がるだろうと思いました。
写真は撮りためていらっしゃったんですね。今回の小川さんの役割は、本に掲載するデータを受け取って、デザインして、印刷会社を決めるといったところでしょうか。
はい。この本における私の役割は、いわゆるブックデザイナーに当たります。文字の書体なども吉村さんに確認してもらいながら、基本は私が選びました。とても信頼していただいて、選んだものにNGが出ることはほぼなかったのですが、自分のなかで迷った時だけ2択でご提案しどちらかを選んでいただいたりしました。
「ガップリ!」を選んでいただいたのは、どのような理由からですか。
本のデザインを進めていくなかで、B6判のクロス貼りハードカバーで束幅(本の厚みの寸法)15ミリと決まったのですが、私がふだん仕事でお願いしている印刷会社ではどこもそのような仕様の製本をやっておらず、一から探すことになりました。部数も初版はそれほど多くなかったため、数量的にも断られる会社が多かったです。印刷会社がなかなか見つからなかったのですが、吉村さんは時間がいくらかかってもよいので、この仕様でやりたいとおっしゃっていました。「ガップリ!」さんはネットで内容を見てすぐに資料を取り寄せました。無料の見本帳がたくさんあり、見積りも詳細でわかりやすく、迅速に対応していただいたので製作をお願いしたいと思いました。また、もし校正を見に行くとなった時に、会社がすぐ行けるところにあるのもよかったです。
「ガップリ!」においでになって、見本をいろいろとご覧になられたそうですね。

▲吉村さんのイメージに合う柔らかいグレーの表紙布クロス
ハードカバーの表紙に貼りたいグレーの生地が、「ガップリ!」さんの見本のなかにはなかったのでご相談差し上げたら、オプションでほかの生地も選べるとのことで、吉村さんと一緒に実物の生地を見にうかがいました。吉村さんは、たくさんの種類のなかから選べたことがとてもうれしかったようです。結果としてイメージにピッタリなグレーがみつかり、でき上がってからも、すごく喜んでいらっしゃいました。
ふつうはページ数や紙の質などを先に決めますが、
今回は束幅が先に決まりました。
そういったこだわりは私にはない感覚で、
その発想はおもしろいなと思いました。
制作するうえで参考にされたものはあったのでしょうか。
吉村さんが作りたい本のイメージはうかがっていたので、大型書店に二人で行って、いろいろな本を参考にしながら、本の厚さや、表紙に貼る布はどういう生地がよいかなどをお聞きし、イメージを具体化していきました。それを本に限りなく反映させて、ほとんど100%のできに仕上がったという感じです。
はじめから本の束幅を決めて制作されたのはどうしてですか。
ふつうはページ数や紙の質などを先に決めますが、今回は束幅が先に決まりました。吉村さんは薄くて小さいのは嫌で、自立するくらいの厚みがよいということで、15~18ミリくらいの束幅になりました。そういったこだわりは私にはない感覚で、その発想はおもしろいなと思いました。吉村さんには製本のイメージはもちろん、「洋書のような」「部屋に飾りたくなるような」「旅に連れて行きたくなるような」といった雰囲気のイメージも強くありましたので、その辺りにも気を使いなるべくイメージ通りになるように進めました。とくにグレーのクロスの色味や見返しのグレイッシュで品のあるピンク色は、これだ!と思うものがセレクトできてよかったです。

▲部屋にインテリアとしても飾りたくなる製本の仕上がり
グレーのクロスを貼った表紙に、黒の箔押しでタイトルを入れたのも素敵ですね。
最初に本屋さんに行った時、吉村さんは箔押しの本にとても惹かれていました。ただ、タイトルや名前は、プロダクトとしてはさり気なくあってほしいし、ユニセックスな感じにしてほしいということだったので、箔押しの色は黒にして、文字はギリギリ小さめに、シンプルに、名前も「yui y」にしました。

▲背表紙に黒の箔押しで入れたタイトルと製作者名
内容は4章に分かれていますが、構成はどのように決められたのでしょうか。
最初に写真データをいただいて、自分のほうで何も聞かずに1、2、3、4と分けたレイアウトイメージを作りました。写真は何年かに分けて撮りためたものなのですが、たまたま色味やイメージなどで分けた章が、ちゃんと時系列に場所や時間で分けられてレイアウトしていたようで驚きました。私の感覚で選んで、そこから入れ替えたりしてもらえばいいかと思ったのですが、ほとんど入れ替えなしで大丈夫でした。
吉村さんの思い描いたイメージどおりの、
たたずまいが美しい本に仕上がったなあと感じました。
一般の書籍制作の校正とは違って、「納品前サンプル」という本の形をしたものでの色校正はいかがでしたか。
私は製本してない状態の校正紙でも、トンボがついていれば仕上がりがイメージできます。ただ、吉村さんにとってははじめてのことですし、余白のイメージがわかりにくいかと思い、色校正の時にはどうしようかと考えていました。そうしたら、納品前サンプルが本のような状態で届き、こちらで手を加えるようなことがなかったのでとても助かりました。吉村さんも完成品に近い形で確認できたので、最終的な仕上がりイメージがわいたようです。
本が実際にでき上がった時は、どんなご感想でしたか。
自画自賛じゃないですが、吉村さんの思い描いたイメージどおりの、たたずまいが美しい本に仕上がったなぁと感じました。シンプルで上品、ユニセックスな感じもイメージどおりです。表紙のクロスもサンプルで触れていましたが、実際の製本の触り心地は抜群でした。本文に関しては、全4章をグレーの微妙な色味で分けており、これがきちんと出るのかが心配だったのですが、絶妙に出ていたので思わずガッツポーズをしてしまいました。写真の多いアートブックでしたので、色の出方もきれいで安心したのを覚えています。

ご自身の作品とは違うプレッシャーもおありだったのでしょうね。クライアントの吉村さんの反応はいかがでしたか。
スタイリストをされていて、センスのある方なので、実物を見た時にどうなるかと思っていたのですが、とても喜んでくれていたので、ああ、よかったとホッとしました。
完成した本はどのように活用していらっしゃるのですか。
まず、出版にともなう展示会をし、その際に本の販売もしました。展示会は昨年(2022年)11月に、東京の世田谷区代田の「LAITON(レトン)」というギャラリーで3日間行いました。東京近辺にいるたくさんの吉村さんのファンの方たちにお越しいただいたほか、吉村さんの地元の名古屋からいらっしゃった方もいました。展示後は、吉村さんがお世話になっているおしゃれなセレクトショップさんなどから、自店で取り扱いたいとお声をかけていただいたそうで、そういう本のイメージに合った店舗に置いて販売してもらっているようです。SNSなどで、購入された方が本を飾ってくださっている写真を見ると、大事にしてもらえているのがわかってとてもうれしくなります。吉村さんも、とても喜んでおられました。

▲ギャラリースペース「LATION」で行ったアートブックの展示会
展示会場では、どのようなお声をいただきましたか。
吉村さんの持っている世界観がギャラリーの雰囲気にとても合っていて、すごく癒されたとか、コロナ禍でギャラリーに行くのを控えていたこともあって、久しぶりにすごくいいものを観たというご感想をいただきました。本も来場した方のほとんどが購入されていかれました。

▲展示会の内装とディスプレイ
小川さんはブックデザイナーとして、今後何か作りたいものはございますか。
この本自体はすごく好評で、プロダクトとしても、とてもよいものができたと思いますし、吉村さんもシリーズ化したいとおっしゃっています。私としては、今回この小さいサイズでこのような素晴らしい作品を作れたことが経験としてもうれしくて、今後、同じようなかたちの提案ができますし、それでほかの方とも本を作れたらおもしろいなと思いました。本当は自分の本も作りたいのですが、なかなか時間がとれません。でも、もし作るとしたら、やはり自分自身ですべて行うのではなく、誰かに本の制作をお願いして、そこで何かしらの化学反応が起こるのを楽しんでみたいです。あと、私は文房具、なかでも方眼ノートが大好きなので、「ガップリ!」さんの姉妹サイト「書きま帳+」のオリジナルノートを利用して、自分の好きなサイズの方眼ノートを出すのもいいなと思いました。
最後に、「ガップリ!」をご利用になられた感想はいかがでしたでしょうか。
最初の資料請求や見積りから、すべて迅速で、ていねいで、とても安心して作業を進めることができました。色校正も実寸にカットされてページ順に束ねられていたので、印刷物の校正に慣れていない吉村さんもスムーズに確認できたようです。この時の校正紙は展示でも使わせていただきました。

▲アートブックの校正紙を展示会に並べて活用
吉村さんがイメージしたとおりの、部屋に飾ってもいいし、旅に連れて行ってもいい、素敵な作品集ですね。
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