インタビュー
画集『熊倉 雅 画集』

/ 20年以上描き続けてきた集大成として、 /
85歳にしてはじめて制作した本格的画集。
老後の趣味として絵を始めて20年以上経ち、85歳になって初の画集を制作した熊倉雅さん。これまで水彩画やアクリル画などの技法を学び、風景画、人物画、静物画と描く対象も多彩で、画集にもさまざまな作品がバランスよく収められています。画集を贈った方々からの反応もよく、「感動した」という声が多く寄せられたそうです。熊倉さんから、画集制作についてのくわしいお話や、絵に対する想いなどを、たっぷり語っていただきました。
絵を描いてきてよかったのは、仲間ができたことです。
一緒に展覧会を開いたり、旅行したりし、それが精神的にも健康的にもよかったと思います。
画集冒頭の「ごあいさつ」のページに書かれていますが、還暦を過ぎてから絵を始められたそうですね。
▲高校時代の熊倉さんのスケッチ姿
若い時から絵が好きで、学生のころからずっと描いていたのですが、社会人になってからは忙しく、一度中断して、余暇の時間が増えたらまた描こうと思っていました。その後、退職し、老後の趣味として再開したらおもしろいと思ったのがきっかけで、62歳の時、1999年に「よみうりカルチャー」に通い始めたのです。私は「いくつになっても」という考えで、実は私の父も70歳で水墨画を始め、亡くなる95歳まで描いていました。そのことは冒頭の「ごあいさつ」でも触れましたが、それは、この画集を見てくださる方も「もう年だから終わり」と思わないでほしいという願いを込めています。
熊倉さんの画歴を拝見すると、スケッチ、静物画、風景画、人物画など、いろいろ学ばれていらっしゃるんですね。どうして、こんなに勉強しようと思われたのですか。
例えば美術学校に進んで専門家になろうという人たちは、まずデッサンの練習をします。それから、水彩や油絵の色を付ける勉強をして、人物や静物、風景などさまざまなジャンルのモチーフを使って描くことを学んでいきます。私も高齢ではありますが、一年生から美術学校に入ったつもりで少しずつステップを踏み、広い分野の勉強をしていきたいと思いました。ですから、いろいろなことを試みようと思い、チャンスがあればそれを教えてくれるところに入って習いました。ジャンルによって学ぶことはそれぞれ違うので、多様な絵を描くというのは、それだけ絵に深みとおもしろさをもたらすのではないかと思っています。
▲屋外で風景を描く熊倉さん
一通り絵の勉強をされて、現在は、どのような活動をされているのでしょうか。
昔の勤務先の美術部OBが集まるグループに参加していますが、コロナ禍で3年位活動を休止しています。それで今は別のグループ(獏の会)で主に風景画を描いています。この会は男女20名ほどの老人が集まって写生会を行っていますが、泊りがけの旅行もあって、絵を描くだけでなく温泉や食事なども楽しんでいます。
楽しそうな会ですね。それでは、絵を描いていてよかったことはありますか。
絵を描いてきてよかったのは、仲間ができたことです。年を取るとだんだん周りに人がいなくなって一人になりがちですが、利害関係のない同じ趣味の人たちと何でも言えるフラットな関係を築けたことが大きかったと思います。先ほどの「獏の会」でも、「絵を描いたら最後まで完成させること」のほかに、「一人で描くな、仲間と描け」、「でき上がったら必ず人に見せること」という3つのことを教えてもらい、私は仲間と一緒に描くことを心がけてきました。それで、一緒に展覧会を開いたり、旅行したりし、それが精神的にも健康的にもよかったと思います。
▲展覧会でお披露目した作品と熊倉さん
やはりレガシーです。85歳になったので、絵画制作の集大成として
自分がやってきたことをまとめて、形にしてあとに遺したいと思いました。
もう20年以上絵を描き続けて、どうして今回、はじめての画集を制作しようと思われたのでしょうか。
やはりレガシーです。85歳になったので、絵画制作の集大成として自分がやってきたことをまとめて、形にしてあとに遺したいと思いました。
画集には64点の作品が収録されていますが、何作品の中から、どのような基準で選ばれたのでしょうか。
それはもう大変な数で、300作品くらいでしょうか。2005年以降の作品を掲載していますが、それ以前のものは初心者レベルで人様にお見せできるようなものではなく、ある程度の水準に達している作品から選びました。そのうえで、私の場合、さまざまなジャンルの絵を描いておりますので、画材によって3部に分けました。そして、日本には四季がありますから、絵の出来不出来に関わらず、春夏秋冬、季節の変化がバランスよく収まるよう選ぶことにしました。そのために、コンクールで落選した絵や、不得意な海の絵を入れたり、逆に自分では好きで、うまく描けた絵だと思っても、構成的に外さざるを得なかったものもあります。先生や第三者に選んでもらう方法もあったのですが、やはりすべて自分で選びました。
構成的には、アクリル画、水彩画、パステル画、木炭素描の画材順になっていますが、この並び順やカテゴリー分けはどのようにして決められたのですか。
展覧会などで油彩画やアクリル画を水彩画と並べて展示すると、色の強弱の関係でどうしても水彩画より目立ってしまいます。そこで展示のテクニックとしてアクリル、水彩、パステルなど画材別にした方が良いと考えました。ジャンル分けは、風景画、人物画、静物画という分け方もあったのですが、例えば風景画でアクリル画と水彩画の絵を同じページに並べると、どうしても水彩画の方が印象が弱く感じられるので、なるべく一緒に並べるのはやめようと思って、画材別に分けました。
▲画材の種類や、人物画、風景画などのジャンル別に考えられた構成
作品選びや構成を考えるのも大変だったと思いますが、画集を制作するにあたり、こだわった点や難しかった点はありますか。
こだわったのは色彩です。原画の色が出ないと感じが全然違ってしまうので、その色を再現できるかどうかが課題でした。何枚かの絵に関しては、「ガップリ!」の担当者の方にずいぶんと苦労をかけてやり直していただきました。特にアクリル画の原画の色が出にくかったんです。キャンバスに描いたアクリル画は厚みもあって、スキャニングも大変そうでしたが、よく対応していただきました。キャンバスならキャンバスのゴワゴワした感じや厚塗りも出していただきたくて、最終的には水彩画との違いもよく出ていました。
▲スキャニング後の補正とピンクトナーの活用でより原画に近づけた再現性
「ガップリ!」に絵のスキャニングもご依頼されたのですよね。
▲スキャンした表紙の絵と原画の比較
絵を印刷する時は、普通は作品を写真で撮るのですが、写真家に頼むと手間がかかりますし、ライティングなどでコストもかかります。ですから、料金の比較をして、コスト面でスキャニングをお願いしました。これも「ガップリ!」を選んだ理由のひとつです。仕上がりは、写真の製版と比べたことがないので、正直言ってあまりわかりませんが、スキャニングでも大丈夫だなとは思いました。みんなに配った際にも、なかなかいい印刷だという評価があがっていました。
これからも自分のその時の体の状態に合わせて、
相応なものに挑戦していきたいですね。
画集が完成した時のお気持ちはいかがでしたか。また、画集を贈られた方からの感想は届いていらっしゃいますか。
▲光沢のある上製本表紙と見返しで完成度アップ
イメージどおりでした。すごいなと思って満足しました。完成した画集は、絵の仲間や、友だち、絵にはあまり関心のない方にも贈りました。絵の仲間には、私がいろいろなジャンルの絵を描いていることを知らない人も多く驚かれましたが、カテゴリー別になっていて退屈せずおもしろかったと言われました。友だちに関しては「60歳を過ぎて20年間趣味に生き、その趣味をひとつの形に完成させた老後の生き方に感心、感銘を受けた」というような感想を、手紙や電話で多数いただきました。絵には関心のない方からも、「こんなことをしていたのか、すごいな」とか、「今の、この長寿社会の老後の生き方を表しているようで感動した」という声がありました。
お友だちの「老後の生き方」にも影響を与えたかも知れませんね。今後の活動についても、おうかがいしてよろしいでしょうか。
今は元気で重いものも持てますが、体が弱ってきたらできる範囲のことで考えようと思っています。昔、ルノアールがリウマチで手が動かなくなって絵が描けなくなった時に、筆を手に縛り付けて描いたとか、マチスが病気になって色紙の切り絵をやり始めたという話がありますが、そういうふうに、これからも自分のその時の体の状態に合わせて、相応なものに挑戦していきたいですね。
最後に、「ガップリ!」を選んだ理由と、利用した感想をお聞かせ願えますか。
探したのはインターネットです。ですが、ネットの情報だけではわからないので、会社を見てみたいと思いました。私は銀行員を長くやっていたので、どんな会社なのか企業判断をしたかったのです。それで、内容もいろいろ調べて、実際に「ガップリ!」の会社に訪問したのですが、歴史と伝統がありながら、若い人たちが新しいことにも挑戦しているという印象を持ち、ここなら製作を任せても大丈夫だと思い決めました。また、単なる委託業者という感じではなく、自分たちで作品を作っているという積極的な姿勢も見られ、そこも好印象でしたね。結果的には反応も早いし、一生懸命やってくれてよかったと思います。完成品をみなさんに見せても、みんな、いいねと言ってくれました。どこで作ったのかと聞いてくる方も多かったので、よく宣伝しておきました(笑)。
60歳を過ぎてからでも、まだまだ勉強したり、何かを創作したりすることができるんだなと心強くなりました。
お話、ありがとうございます。
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- RYU(大迫龍太) 様
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- 緒方悠輝也 様
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- 岡山県神社庁 様
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- なぁちゃ 様
- Happy Sora no Osanpo
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- 国立大学法人東北大学・東北アジア研究センター 様
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- たびするウミガメ~これからのウミはどんなウミ?~
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ガップリ!で印刷・製本した作品をご紹介「ガップリ!ギャラリー」
「ガップリ!ギャラリー」では、ガップリ!で印刷・製本したお客さまの製作事例をご紹介しています。
ギャラリーでは、作品の写真だけではなく、仕様や特徴、お客さまインタビューなども掲載しています。検索機能もあり、「製本タイプ」「サイズ」「用途」「オプション加工」「業種」から絞り込んで、素早く見たい製作事例が探せます。
「ガップリ!ではどんなことができるのか過去の作品を確認したい」「本づくりのヒントが欲しい」という方には参考になると思いますので、ぜひご覧ください。
85歳にしてはじめて制作した本格的画集。
老後の趣味として絵を始めて20年以上経ち、85歳になって初の画集を制作した熊倉雅さん。これまで水彩画やアクリル画などの技法を学び、風景画、人物画、静物画と描く対象も多彩で、画集にもさまざまな作品がバランスよく収められています。画集を贈った方々からの反応もよく、「感動した」という声が多く寄せられたそうです。熊倉さんから、画集制作についてのくわしいお話や、絵に対する想いなどを、たっぷり語っていただきました。
絵を描いてきてよかったのは、仲間ができたことです。
一緒に展覧会を開いたり、旅行したりし、それが精神的にも健康的にもよかったと思います。
画集冒頭の「ごあいさつ」のページに書かれていますが、還暦を過ぎてから絵を始められたそうですね。

▲高校時代の熊倉さんのスケッチ姿
若い時から絵が好きで、学生のころからずっと描いていたのですが、社会人になってからは忙しく、一度中断して、余暇の時間が増えたらまた描こうと思っていました。その後、退職し、老後の趣味として再開したらおもしろいと思ったのがきっかけで、62歳の時、1999年に「よみうりカルチャー」に通い始めたのです。私は「いくつになっても」という考えで、実は私の父も70歳で水墨画を始め、亡くなる95歳まで描いていました。そのことは冒頭の「ごあいさつ」でも触れましたが、それは、この画集を見てくださる方も「もう年だから終わり」と思わないでほしいという願いを込めています。
熊倉さんの画歴を拝見すると、スケッチ、静物画、風景画、人物画など、いろいろ学ばれていらっしゃるんですね。どうして、こんなに勉強しようと思われたのですか。
例えば美術学校に進んで専門家になろうという人たちは、まずデッサンの練習をします。それから、水彩や油絵の色を付ける勉強をして、人物や静物、風景などさまざまなジャンルのモチーフを使って描くことを学んでいきます。私も高齢ではありますが、一年生から美術学校に入ったつもりで少しずつステップを踏み、広い分野の勉強をしていきたいと思いました。ですから、いろいろなことを試みようと思い、チャンスがあればそれを教えてくれるところに入って習いました。ジャンルによって学ぶことはそれぞれ違うので、多様な絵を描くというのは、それだけ絵に深みとおもしろさをもたらすのではないかと思っています。

▲屋外で風景を描く熊倉さん
一通り絵の勉強をされて、現在は、どのような活動をされているのでしょうか。
昔の勤務先の美術部OBが集まるグループに参加していますが、コロナ禍で3年位活動を休止しています。それで今は別のグループ(獏の会)で主に風景画を描いています。この会は男女20名ほどの老人が集まって写生会を行っていますが、泊りがけの旅行もあって、絵を描くだけでなく温泉や食事なども楽しんでいます。
楽しそうな会ですね。それでは、絵を描いていてよかったことはありますか。
絵を描いてきてよかったのは、仲間ができたことです。年を取るとだんだん周りに人がいなくなって一人になりがちですが、利害関係のない同じ趣味の人たちと何でも言えるフラットな関係を築けたことが大きかったと思います。先ほどの「獏の会」でも、「絵を描いたら最後まで完成させること」のほかに、「一人で描くな、仲間と描け」、「でき上がったら必ず人に見せること」という3つのことを教えてもらい、私は仲間と一緒に描くことを心がけてきました。それで、一緒に展覧会を開いたり、旅行したりし、それが精神的にも健康的にもよかったと思います。

▲展覧会でお披露目した作品と熊倉さん
やはりレガシーです。85歳になったので、絵画制作の集大成として
自分がやってきたことをまとめて、形にしてあとに遺したいと思いました。
もう20年以上絵を描き続けて、どうして今回、はじめての画集を制作しようと思われたのでしょうか。
やはりレガシーです。85歳になったので、絵画制作の集大成として自分がやってきたことをまとめて、形にしてあとに遺したいと思いました。
画集には64点の作品が収録されていますが、何作品の中から、どのような基準で選ばれたのでしょうか。
それはもう大変な数で、300作品くらいでしょうか。2005年以降の作品を掲載していますが、それ以前のものは初心者レベルで人様にお見せできるようなものではなく、ある程度の水準に達している作品から選びました。そのうえで、私の場合、さまざまなジャンルの絵を描いておりますので、画材によって3部に分けました。そして、日本には四季がありますから、絵の出来不出来に関わらず、春夏秋冬、季節の変化がバランスよく収まるよう選ぶことにしました。そのために、コンクールで落選した絵や、不得意な海の絵を入れたり、逆に自分では好きで、うまく描けた絵だと思っても、構成的に外さざるを得なかったものもあります。先生や第三者に選んでもらう方法もあったのですが、やはりすべて自分で選びました。
構成的には、アクリル画、水彩画、パステル画、木炭素描の画材順になっていますが、この並び順やカテゴリー分けはどのようにして決められたのですか。
展覧会などで油彩画やアクリル画を水彩画と並べて展示すると、色の強弱の関係でどうしても水彩画より目立ってしまいます。そこで展示のテクニックとしてアクリル、水彩、パステルなど画材別にした方が良いと考えました。ジャンル分けは、風景画、人物画、静物画という分け方もあったのですが、例えば風景画でアクリル画と水彩画の絵を同じページに並べると、どうしても水彩画の方が印象が弱く感じられるので、なるべく一緒に並べるのはやめようと思って、画材別に分けました。

▲画材の種類や、人物画、風景画などのジャンル別に考えられた構成
作品選びや構成を考えるのも大変だったと思いますが、画集を制作するにあたり、こだわった点や難しかった点はありますか。
こだわったのは色彩です。原画の色が出ないと感じが全然違ってしまうので、その色を再現できるかどうかが課題でした。何枚かの絵に関しては、「ガップリ!」の担当者の方にずいぶんと苦労をかけてやり直していただきました。特にアクリル画の原画の色が出にくかったんです。キャンバスに描いたアクリル画は厚みもあって、スキャニングも大変そうでしたが、よく対応していただきました。キャンバスならキャンバスのゴワゴワした感じや厚塗りも出していただきたくて、最終的には水彩画との違いもよく出ていました。

▲スキャニング後の補正とピンクトナーの活用でより原画に近づけた再現性
「ガップリ!」に絵のスキャニングもご依頼されたのですよね。

▲スキャンした表紙の絵と原画の比較
絵を印刷する時は、普通は作品を写真で撮るのですが、写真家に頼むと手間がかかりますし、ライティングなどでコストもかかります。ですから、料金の比較をして、コスト面でスキャニングをお願いしました。これも「ガップリ!」を選んだ理由のひとつです。仕上がりは、写真の製版と比べたことがないので、正直言ってあまりわかりませんが、スキャニングでも大丈夫だなとは思いました。みんなに配った際にも、なかなかいい印刷だという評価があがっていました。
これからも自分のその時の体の状態に合わせて、
相応なものに挑戦していきたいですね。
画集が完成した時のお気持ちはいかがでしたか。また、画集を贈られた方からの感想は届いていらっしゃいますか。

▲光沢のある上製本表紙と見返しで完成度アップ
イメージどおりでした。すごいなと思って満足しました。完成した画集は、絵の仲間や、友だち、絵にはあまり関心のない方にも贈りました。絵の仲間には、私がいろいろなジャンルの絵を描いていることを知らない人も多く驚かれましたが、カテゴリー別になっていて退屈せずおもしろかったと言われました。友だちに関しては「60歳を過ぎて20年間趣味に生き、その趣味をひとつの形に完成させた老後の生き方に感心、感銘を受けた」というような感想を、手紙や電話で多数いただきました。絵には関心のない方からも、「こんなことをしていたのか、すごいな」とか、「今の、この長寿社会の老後の生き方を表しているようで感動した」という声がありました。
お友だちの「老後の生き方」にも影響を与えたかも知れませんね。今後の活動についても、おうかがいしてよろしいでしょうか。
今は元気で重いものも持てますが、体が弱ってきたらできる範囲のことで考えようと思っています。昔、ルノアールがリウマチで手が動かなくなって絵が描けなくなった時に、筆を手に縛り付けて描いたとか、マチスが病気になって色紙の切り絵をやり始めたという話がありますが、そういうふうに、これからも自分のその時の体の状態に合わせて、相応なものに挑戦していきたいですね。
最後に、「ガップリ!」を選んだ理由と、利用した感想をお聞かせ願えますか。
探したのはインターネットです。ですが、ネットの情報だけではわからないので、会社を見てみたいと思いました。私は銀行員を長くやっていたので、どんな会社なのか企業判断をしたかったのです。それで、内容もいろいろ調べて、実際に「ガップリ!」の会社に訪問したのですが、歴史と伝統がありながら、若い人たちが新しいことにも挑戦しているという印象を持ち、ここなら製作を任せても大丈夫だと思い決めました。また、単なる委託業者という感じではなく、自分たちで作品を作っているという積極的な姿勢も見られ、そこも好印象でしたね。結果的には反応も早いし、一生懸命やってくれてよかったと思います。完成品をみなさんに見せても、みんな、いいねと言ってくれました。どこで作ったのかと聞いてくる方も多かったので、よく宣伝しておきました(笑)。

60歳を過ぎてからでも、まだまだ勉強したり、何かを創作したりすることができるんだなと心強くなりました。
お話、ありがとうございます。
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- 株式会社六り 様

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「ガップリ!ではどんなことができるのか過去の作品を確認したい」「本づくりのヒントが欲しい」という方には参考になると思いますので、ぜひご覧ください。