インタビューページ『うしのあし ひとのあし』|上製本(ハードカバー仕上げ)のオリジナル絵本が50冊からつくれる

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オリジナル絵本 インタビュー
『うしのあし ひとのあし』

『うしのあし ひとのあし』国立大学法人東北大学・東北アジア研究センター

/ 現地の人たちの絵によって鮮やかに伝えられるエチオピアの暮らし。 /
多言語対応で日本とエチオピアの架け橋に。

「うしのあし ひとのあし」はエチオピアの暮らしや、持ち込まれた日本の地下足袋が現地でどう捉えられ期待されているかを、エチオピアの人たちが描いた絵と4つの言語で伝えた絵本です。世界とつながるこの絵本について、製作した東北大学・東北アジア研究センターの方にお話を伺いました。

その日本持ち帰ってきてみると、写真映像より生々しく
現地視点伝えていることに気づきまして。

絵本を作ろうと思ったきっかけは何ですか。

エチオピアと日本の位置関係を示した世界地図

2020年の1月に大学の共同フィールドワークとして、アフリカのエチオピアに出かけました。牛耕農村といって牛の力で畑を耕す昔ながらの農業が行われているような土地だったんですけど、言葉が通じないながらも出会った子どもや大人の方にも絵を描いてもらったんです。それで、その絵を日本に持ち帰ってきてみると、写真や映像よりも生々しく現地の人の視点を伝えていることに気づきまして。大学の活動の中でもエチオピアの様子を日本の人たちに伝えていこうという思いがあったのと、コロナ禍で直接現地に行けなくても絵本を作ることで日本とエチオピアの交流を続けていくことができるんじゃないかと思って、みんなが描いてくれた絵を使って絵本を作ってみようと思ったんです。そして日本で絵本を見てもらうと同時にエチオピアの人たちにも読んでもらいたいなと思って、日本語と英語と現地のオロモ語と、アムハラ語というエチオピアの代表的な言語の4言語を入れました。

共同フィールドワークとはどういったものですか。

十数年くらい現地に通っている地域研究の研究者がいまして、その方が農業の研究をする中でエチオピアで地下足袋を作るという活動をしているんです。現地の土壌というのは粘土質でとても粘り気があるので、みんな裸足で畑を耕しているんですけど、それによって破傷風だったりいろんな足の病気が多いんですね。それで日本の地下足袋を持ち込んだところ、足にフィットして破けにくいということでとても便利だと、現地の人たちから自分も欲しいという声が多くあがりまして。でも、日本製の質の高いものとなると現地の人にはすごく高価になってしまうので、現地の素材で、現地の人たちが作れるようなものをいっしょに考えていこうというのがその活動なんです。絵本では地下足袋がどのように役に立つかも大きなテーマとしていて、絵本を通して活動も伝えていけたらと思っています。

どうしてエチオピアの人に絵を描いてもらおうと思ったのですか。

集まって絵を描くエチオピアの人々

▲集まって絵を描くエチオピアの人々

長年、現地で地下足袋を作ろうとしてはいるんですけど、なかなか適した素材や、技術的にも日本のような工場があるわけではないので、現地の職人がいま工夫を進めているところなんですね。それで牛革を使ったり古いデニムを使ったりして毎年のように新しいタイプのエチオピア製の地下足袋ができるんですが、その最新のものを村でお披露目しようということになりまして。もともと私自身が美術関係の活動をしていることもあって、現地に通っている研究者からお披露目にあわせて何か盛り上げるような展覧会をして欲しいという要望がきたんです。そこで、せっかく私が行くんだからと思っていろいろな画材を用意し、現地の人に絵を描いてもらってその絵を飾ることにしたのがきっかけです。

絵はどのようにして描いてもらったのですか。

三角形の紙に描かれた絵が旗のように飾られている様子

▲三角形の紙に描かれた絵が旗のように飾られている様子

何でも好きなものを描いて欲しいと投げかけると、一度に10人くらい集まってきて、みんな好きなように描き始めるんです。それがエチオピアの特徴的なかやぶき屋根の土壁の家だったり、牛とかニワトリとか家畜とか、あとはエチオピアってコーヒーが有名なんですけどコーヒーポットとか。自分たちの生活の中で当たり前に目にする身近ないろんなもので。エチオピアは祝日とか祭日が多くて、祝祭日には三角形のカラフルな旗を飾る習慣があるんですね。それになぞらえて同じような形の画用紙をみんなで彩っていくというイメージがあって。それでA3サイズくらいの画用紙を三角形に切ったものを渡したら、大体真ん中とかに人とか家とか牛とかを描いてくれたんです。

エチオピアの人が描いた絵で絵本を作るというアイデアは新鮮ですね。

エチオピアの人に描いてもらった数々のイラスト

▲描いてもらった数々のイラスト

実は141枚の絵が集まっていて、日本に持ち帰って一枚一枚見ていると、とても素敵な絵だし現地の様子がありありと浮かび上がってくるようなものだったので、これはぜひたくさんの人に見てもらいたいなと思ったんですね。それで絵を見ながら自分自身が経験した現地での生活を思い出してお話を作っていったという感じです。結局、絵本に使ったのは87枚で全部は収められなかったんですけど、多くの絵が集まった様子も絵本として再現したいなと思って、いろんな人が描いた絵を1ページにいくつも使用しました。

現地読んでもらうことも考えて丈夫なもの作りたかったので、
上製本こだわりました。

たくさんの絵を使った以外にもこだわった点などはありますか。

4言語の文章とイラストがレイアウトされた本文

▲4言語の文章とイラストがレイアウトされた本文

今回は4言語が入っているので、やっぱり短い文章でも分量的には4倍になってしまうんですね。ですから、なるべく文字数を少なく絵で印象が伝わるようにしたことと、あとは現地で読んでもらうことも考えて丈夫なものを作りたかったので上製本にこだわりました。まだ家の中も土間で暮らしているところで、子どもたちも土の中で遊んでいるような環境なので。難しかったのは87枚の絵を使っているため、その組み合わせだったり、いろんな色が絵の中に入っているから色の調整とかは、楽しいことでもあったけど結構考えながらやりました。

「ガップリ!の絵本」を選んだ理由は何ですか。

もともと上製本のしっかりしたものを作りたいなと思っていたのと、予算的にはそれほど部数が作れないという事情もありまして。インターネットでいろいろ検索をして「ガップリ!の絵本」さんを見つけました。ウェブサイトを拝見した時にとてもわかりやすくて、相談がしやすかったということもあって、それでお願いすることにしたんです。あと原画のスキャニングサービスもよかったですね。利用させていただき助かりました。神楽坂は以前から書店のギャラリーなどで展示会をしたことがあったのですが、打ち合わせで「ガップリ!の絵本」さんに伺い、やはり本の町なんだなと思いました。

絵本が完成した時の感想はいかがでしたか。

緑や赤の発色が綺麗な上製本の表紙

▲緑や赤の発色が綺麗な上製本の表紙

とても素晴らしい仕上がりで感動しました。やっぱり上製本の本独特の手に持った質感というか、すごく感覚的なことなんですけど。色もすごく鮮やかで、きれいで嬉しかったです。

絵本できたプロセスにも特に人類学研究者からは
興味持たれていて、絵本自体とても素敵なものだと。

絵本はどのように活用されていますか。

「丸五」のギャラリーで紹介されている様子

▲「丸五」のギャラリーで紹介されました

行ったところがエチオピアの都市から離れたウォリソという農村なのでやっぱり国際郵便でも届けるのが難しくて、次に現地に行った時に直接渡したいなとチームの中で話していまして。今はエチオピアに届ける分は保管しておいて、それ以外は大学関係の研究会が主なんですけど、エチオタビ、ウォリソタビについて話をして欲しいと招かれた時に、地下足袋の話にあわせてそこから発展した活動の一つとしてこの絵本も紹介しています。また、東京の日本橋にある地下足袋メーカーの「丸五」という会社のショップ兼ギャラリーで、私たちの地下足袋製造に関する活動報告を展示しまして、絵本を原画といっしょに紹介させていただきました。

研究会や展示会などでの評判はいかがですか。

絵本と一緒に原画も展示

▲絵本と一緒に原画も展示

関心が高いですね。絵本が出来たプロセスにも特に人類学の研究者からは興味を持たれていて、絵本自体とても素敵なものだと。研究会では絵本を見せながら朗読をすることも多いのですが、すごく評判がいいです。展示会を見に行った方々からは、内容が詰まったよい展示であるということと、エチオピアに同行した研究者のメンバーからは原画といっしょに絵本が展示されていることで、現地で行った展覧会がある種再現されたようだと反応がよかったです。オロモ語とアムハラ語を翻訳してもらった現地のエチオピアの方には絵本の写真をメールで送ったんですが、とても素晴らしいものになったねと喜んでくれました。

今後、作ってみたい本はありますか。

まだアイデア段階ではあるんですけど。エチオピアで進めている地下足袋の製造を誰でも簡単にできるような、縫い方とかを教えるソーイングブックみたいなものが作れたら面白いかなっていうのは、時々考えているところですね。日本の地下足袋ももともと手縫いで作られていたわけですし。その絵本の中に素材となる布とか革を綴じても面白いかなっていうアイデアはあります。

絵本を届けた時の現地の子どもたちの笑顔が早く見たいですね。お話、ありがとうございます。

東北大学・東北アジア研究センター様製作のオリジナル絵本「うしのあし ひとのあし」

多言語絵本「うしのあし ひとのあし」

▼絵本についてのお問い合わせ先はこちら▼

<Mail address> ushitohito@gmail.com(担当:是恒)

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