オリジナル絵本 インタビュー
『ずんずん』

/ デジタルとアナログを横断し /
変わりゆく時代を「自分らしく」進む姿を描いた絵本。
Webディレクションの現場で培った視点を武器に、コミュニケーションを生む多彩なコンテンツ制作も手掛けている、りみさん。毎年恒例となっている年賀状制作では、デジタルの日常から離れ、アナログの質感に挑むことを大切にされています。2026年、りみさんが選んだのは「AIを駆使し、自分一人で絵本を作る」という新しい挑戦でした。社会情勢の変化や身近な別れを経験する中で、ただ前を向いて歩き続けるというシンプルで力強い意志を込めた本作。最新技術を血の通った温かい作品へと昇華させた、その制作の舞台裏をたっぷり語っていただきました。
デジタルな日常から一歩外へ、
「触れるもの」へのこだわり。
毎年、年賀状としては変わったものを制作されているそうですね。そのこだわりについて教えてください。
▲今回の絵本に同封した挨拶文
毎年、年賀状では何かしら「モノ」を作るようにしていて、これまでもボードゲームやペーパークラフトなどを制作してきました。私の本業はWeb制作などのデジタル領域がメインなのですが、だからこそ年賀状では、あえてデジタルではない、実際に触れられるアナログなものを作りたいという思いがあります。
デジタルだけに閉じこもっていると、どこか不自由さを感じることもあって、アナログに触れることが自分にとって「外の世界に出る」ような、面白いチャレンジになるんです。
数ある選択肢の中で、今回「絵本」という形を選んだのはなぜでしょうか?
私は絵も文章も得意ではないのですが、絵本には以前から興味があり、イラストレーターさんに相談したこともありました。ただ、誰かと協力して一から作るとなると、膨大な時間とコストがかかり、なかなか踏み出せずにいたんです。それが2024年の末あたりから、AIの精度が飛躍的に向上したことで、「これなら風呂敷を広げすぎず、AIを使いながら自分一人で作れるのではないか」と思えたのが、今回絵本に挑戦した大きな理由です。
りみさんにとって、絵本という媒体にはどのような魅力があるのでしょうか?
▲絵本にはコミュニケーションツールとしての可能性も広がっています
絵本そのものへの思い入れというよりは、コミュニケーションの「ツール」としての可能性に面白さを感じていました。
私がWeb制作の仕事をしている根底にも、「人とモノ、人と人を繋ぐ場を作りたい」という思いがあります。そうした中で、例えばお父さんが子どもに読み聞かせるような、誰かと誰かの間に生まれるコミュニケーションに特化した本を作ってみたいという構想を、以前から抱いていました。
今回はまず、自分なりに絵本制作の工程を一通り経験してみようという、最初のチャレンジでもありました。
社会不安と死生観に向き合い、
2026年のテーマを導き出すまで。
今回の絵本には、どのようなテーマを込められたのでしょうか?その背景についても教えてください。
毎年、年賀状を作る際には1年を振り返ってテーマを決めるのですが、今年は「自分の意志で、自分らしく歩み続ける」という言葉を据えました。これに決めた背景には、大きく分けて三つの理由があります。
一つは政治的な状況です。ネット上などで国民の意見が二分され、表面上は見えなくても、どこかギスギスとした空気を感じる世の中になってきたな、という印象がありました。
二つ目はAIの進化です。仕事の在り方や自分の生き方が問われるシーンが増え、多くの人が「AIに職を奪われるのではないか」という不安や、変化のスピードに対する戸惑いを抱えていると感じたからです。
社会的な動揺や技術への不安。それに加えて、もう一つの理由とは何だったのでしょうか?
三つ目は、親族を亡くした経験を通して、改めて「人の死」を意識するようになったことです。
大切な人を失っていく感覚や、死んでしまうとはどういうことなのかを、深く考えるようになりました。
こうした先行きの見えない状況や個人的な悲しみがあっても、時間は止まってくれません。
結局は「やるしかない」と実情を割り切り、ただただ、ずんずんと歩き続けていく。その姿の中に、絵本を手に取った方が自分なりの希望を見出してくれたら――。日々を懸命に生きる人々を応援する「エール」になればいいなと考えました。
▲どんな状況の中でも、ただ前へ進み続ける姿を描いた本編
タイトルにもなっている「ずんずん」という言葉が印象的です。この言葉を選んだのはなぜですか?
▲家族3人が並ぶ、表紙の線画
感覚的なものですが、力強く行進していくようなイメージが頭の中にありました。
アニメ『サザエさん』のオープニングで、一家が前へ進んでくるシーンが思い浮かび、あのリズムを言葉にするなら何だろうと考えたんです。
「トコトコ」よりも強く、前進する意志を感じさせる「ずんずん」という響きが一番しっくりきました。
また、淡々と歩き続ける動作と重なるように、文章も4音(4文字)の一定のリズムで統一しています。
「自分らしく歩み続ける」というテーマの一方で、絵本の中では常に誰かが主人公に寄り添って歩いていますね。ここにはどのような意図があるのでしょうか?
そこはおそらく、親族との別れから深まった「死」に対する私なりの考えが反映されているのだと思います。
人は人生の中で死別や別れを経験しますが、私は、一度出会った人は必ず自分の中の「何かしらの一部」になり、生き続けているように感じるんです。ですから、人生を歩み続ければ出会う人は増えていきますし、その先に別れが訪れたとしても、その存在がすべて消えてしまうわけではなく、一緒に歩き続けているのではないか、という気がしています。
物語の終盤でおじいちゃんおばあちゃんが亡くなっても、あえて姿を消さず、幽霊のような形で描き続けたのは、「死んでも離れているわけではない」というメッセージを込めたかったからです。
AIとの試行錯誤、4音のリズムと
「変わらない構図」へのこだわり。
今回、文章はすべて「4音(4文字)」で構成されていますが、どのように作成されたのでしょうか?
4音という制約の中で言葉を選ぶのは、想像以上に大変でした。AIに何千もの単語をリストアップさせ、その中から選んでいったのですが、名詞まで含めると候補が無限に広がってしまうため、当初はリストから外していました。
ところが、いざ文章にしようとすると言葉がうまく繋がらず、やはり名詞が必要だと気づきました。最終的には、不足している言葉を自分で日々書き留め、それらを組み合わせて形にしていきました。
今振り返ると、単語単位ではなく、最初から「4音のフレーズ」を何百通りもAIに作らせていれば、もう少しスムーズに進められたかもしれません。そこは、はじめてならではの反省点ですね。
あえて「4音」という厳しい制約を設けたことで、表現にどのような変化が生まれたのでしょうか?
正直に言えば、少し「失敗だったかな」とも思っているんです(笑)。制約を強くしすぎたせいで言葉が足りず、やや稚拙な表現になってしまったという反省があります。
ただ、大切にしたかったのは、難しくて凝った言葉を無理に使わないこと。小さなお子さんでも音として馴染めるシンプルさを目指しました。その場では意味がわからなくても、大人になる過程で「ああ、そういうことだったのか」といつか腑に落ちるような、絶妙なレベル感に抑えたかったんです。
結果として「これ、何なんだろう?」と思われてしまうかもしれませんが、それも含めて一つのチャレンジとして楽しみながら形にしました。
▲4音のリズムとフレーズを保ったまま、展開する物語
今回の絵本では、長い年月をずっと同じ構図で描いていますよね。この構成にはどのような意図があるのでしょうか?
実は、変化を際立たせるためというよりも、一つの「リズム」を作りたかったんです。私自身、絵や文章で複雑な感情を表現するのは難しいと感じていたので、あえて淡々とリズムを刻む形にしようと考えました。
4音の言葉が刻む一定のテンポと、ページをめくっても変わらない構図。その二つが重なることで、淡々と歩き続けるリズムのようなものを表現できればと思ったんです。
絵の制作においてもAIを駆使されたそうですが、同じ構図を守りながらキャラクターを成長させていく作業は難しかったのでは?
そうなんです。実はAIにとって、まったく同じレイアウトを維持するのは最も苦手なことの一つだったりします。指示を出すたびにAIが良かれと思って細部を変えてしまうので、その変化を食い止めるのが本当に大変でした。
成長していく主人公の顔立ちを崩さず、それでいて確実に年齢を重ねさせる。その絶妙なさじ加減にはかなりの時間を費やしました。加えて、水彩画特有のムラや色味の指定にも苦労しましたね。
指示の言葉選びが非常に難しく、具体的なサンプルをAIに与えてしまうと、今度はそのイメージに縛られて新しいものが描けなくなる。そうしたジレンマもあり、まさに試行錯誤の連続でした。
▲初期ラフ案と人物モデル
AIを活用したからこそ得られた表現や、逆に「自分らしさ」や「温もり」を込めた部分はどこですか?
水彩画らしい繊細な風合いは、AIがとてもいい塩梅で仕上げてくれました。これを自力で再現しようとすれば気が遠くなる作業ですが、そこは技術の進歩を強く感じましたね。
一方で、AIに任せきりにするとキャラクターの目が整いすぎてしまい、人間味や温かみが消えてしまうんです。
AIはあえて崩したような表情を「正しくない」と判断して補正しようとしますが、私は「あの目でありたい、あの鼻でありたい」と、守りたい表情をキープするために何度も指示を重ねました。単に綺麗なだけの絵ではなく、どこか心に引っかかる「体温」を感じるような表情を残したかったんです。
▲調整段階の背景と人物
デジタル印刷の印象を覆す、超高精細ならではの自然な仕上がり。
絵本を制作するにあたって「ガップリ!の絵本」を選んでいただいた決め手は何でしたか?
サイト上の情報が充実していて、しっかりとした形の絵本を確実に作ってくれそうだという安心感があったからです。納期が明確で、料金もシミュレーターですぐに把握できた点も大きなポイントでした。
▲本製作前に色味や仕様などがチェックできる仮製本
製本方法には、何かこだわりがあったのですか?
実際のところ、絵本の製本について詳しい知識があったわけではありません。ただ、いわゆる“絵本らしい絵本”を作りたいという思いがあり、ハードカバーという形にはこだわりました。
年賀状としての制作ではありましたが、私の中では「年賀状らしさ」よりも「作品としての完成度」を優先しています。例えば昨年はボードゲームを制作し、箱のクオリティを追求しました。
今回は絵本だからこそ、“ザ・絵本”としてしっかり成立していること。その佇まいを何より大切にしたかったんです。
ガップリ!の絵本では、「超高精細デジタル印刷」を採用していますが、仕上がりの感想をお聞かせください。
正直、驚きました。デジタル印刷はもっとテカテカした、コピー機のような質感になるのかなと想像していたのですが、実物はとても自然に紙に馴染んでいました。モニターで見ていた発色もそのまま再現されていて、このクオリティのものが少部数から作れるというのは、本当にすごいと感じました。
絵本が完成したときの心境はいかがでしたか?
やっと苦悩から解放された、という感じです(笑)。
毎年、制作中は本当に苦しくて「来年は絶対にもう作らない!」と心に決めるんです。「こんなこと、もうやってられない」って。でも、時期が来ると、気づけば作り始めてしまう。宮崎駿監督が映画を完成させるたびに引退宣言をして、しばらくするとまた新作に掛かる……あの心境に、どこか似ているのかもしれませんね(笑)。
絵本を手にした方からの反響はいかがですか?
▲絵本を手にしたお子さんが、楽しそうに読んでいる様子
お子さんにあげてしまうパターンが多いみたいで、実際に子どもが読んでいる写真が送られてきたりもしています。
あとは同業というか、クリエイティブな視点で見てくれる方から「チャレンジとして面白い」と評価していただくこともあり、概ね良い反応をいただけています。
「自分には才能がないから」と一歩踏み出せない方に、アドバイスをいただけますか。
今の時代、AIというツールもありますし、「やれない」ということはそれほどないと思うんです。
もし一人で無理なら、誰かと一緒に作ってもいい。諦める前に、まずは自分の思いを助けてくれる道具や、支えてくれる人を探してみてほしいです。
「諦めないこと」を、一度やってみてほしいなと思います。
最後に、「ガップリ!の絵本」サービスを利用された感想をお願いします。
制作に時間がかかり、入稿がかなり遅れてしまったのですが、年始に間に合わせるため、数日でも前倒しできるよう調整してくださいました。その柔軟な対応には本当に感謝しています。ありがとうございました。
「絵も文章も得意ではない」というりみさんが、AIを駆使して作り上げたこの一冊。
そこには、技術だけでは語れない温かさが宿っていました。
時代に惑わされず「ずんずん」と歩んでいくその姿勢に、勇気をもらえるようなインタビューでした。
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- 株式会社水野製菓様
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- 蟲の新世界-アリとのぞく、みんなの未来
- NPO法人バイオミメティクス推進協議会様
- 心で見る塗り絵
- テルヤアスマ様
- プリンセスすみれプリンセスさらとくろいまじょ
- 作/かたやまゆかり様
絵/うえはらよしこ様
- ヨーホーじいさん
- しおふり様
- やきもち地蔵
- 山の街まちづくり協議会様
- メイヤーレモンのきのしたで
- ぎやごんRyuji様
- なにがあっても
- 作/倉本ななこ様
画/谷口マリエ様
- おーい、仲間に入れてよ。
- 有限会社オフィスユキ 様
- あこちゃんとひみつのごはん
- 徳永陶磁器株式会社 様
- おじいさんとまほうのたね
- 三瀬読み語りの会ホンホン(佐賀市) 大江登美子 様
- NOOK 上巻
- tricolor(トリコロール) 様
- くじらの夫婦
- 小海町役場 様
- うずまきぐるぐる
- catable(きゃっとえいぶる) 様
- むぎ
- MUGI BOOK PROJECT 様
- こねずみたちのサプライズ/粋な3人組
- 女子美術大学 保育美術研究会 代表 細矢智寛 様
- あこがれ世界の音楽室1 海底より
- 作/橘山まさお様
絵/sea-no様
- おもいはめぐる
- sakko様
- さると木
- 文/なかいずみ とうま様
絵/ハセガワ直子様
- うちのママってヘンなんだ
- あずきみるく様
- おはなしのもり
- 任意団体「デフシル-DEAF SHIRU-」様
- ひとつの森
- ハシケン様
- TASCぎふコラボ展vol.8 虹色の木の下で
- 作/丹賀澤賢様
絵/naomi様・金田典子様
- とのととどまる。~殿 ニューヨークへ行く~
- 作/とどまる様
絵/あきばたまみ様・かんのあき様
- かぞくです
- 作/鈴木まど佳様・弓﨑也美様・Jennifer Martin様
絵/AKITO HOSHINO様
- にゃーご こうえんへいく
- 株式会社blue dreamプランニング ずむずむ®絵本
真下直子様
- My Friends
- 作/くりくり様 絵/ふっかー様
- MONSTER'S STORY BOOK
- TOMASON様
- 平田五郎
- りふdeおは梨様
- うまれもった ひかり / アゴのはずれた くるみわりにんぎょう
- えのもと かずき様
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- 絵本とおひるね舎 甲斐 絵里(エリック ウーリ)様
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- 株式会社グラフィッコ様
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変わりゆく時代を「自分らしく」進む姿を描いた絵本。
Webディレクションの現場で培った視点を武器に、コミュニケーションを生む多彩なコンテンツ制作も手掛けている、りみさん。毎年恒例となっている年賀状制作では、デジタルの日常から離れ、アナログの質感に挑むことを大切にされています。2026年、りみさんが選んだのは「AIを駆使し、自分一人で絵本を作る」という新しい挑戦でした。社会情勢の変化や身近な別れを経験する中で、ただ前を向いて歩き続けるというシンプルで力強い意志を込めた本作。最新技術を血の通った温かい作品へと昇華させた、その制作の舞台裏をたっぷり語っていただきました。
デジタルな日常から一歩外へ、
「触れるもの」へのこだわり。
毎年、年賀状としては変わったものを制作されているそうですね。そのこだわりについて教えてください。
▲今回の絵本に同封した挨拶文
毎年、年賀状では何かしら「モノ」を作るようにしていて、これまでもボードゲームやペーパークラフトなどを制作してきました。私の本業はWeb制作などのデジタル領域がメインなのですが、だからこそ年賀状では、あえてデジタルではない、実際に触れられるアナログなものを作りたいという思いがあります。
デジタルだけに閉じこもっていると、どこか不自由さを感じることもあって、アナログに触れることが自分にとって「外の世界に出る」ような、面白いチャレンジになるんです。
数ある選択肢の中で、今回「絵本」という形を選んだのはなぜでしょうか?
私は絵も文章も得意ではないのですが、絵本には以前から興味があり、イラストレーターさんに相談したこともありました。ただ、誰かと協力して一から作るとなると、膨大な時間とコストがかかり、なかなか踏み出せずにいたんです。それが2024年の末あたりから、AIの精度が飛躍的に向上したことで、「これなら風呂敷を広げすぎず、AIを使いながら自分一人で作れるのではないか」と思えたのが、今回絵本に挑戦した大きな理由です。
りみさんにとって、絵本という媒体にはどのような魅力があるのでしょうか?
▲絵本にはコミュニケーションツールとしての可能性も広がっています
絵本そのものへの思い入れというよりは、コミュニケーションの「ツール」としての可能性に面白さを感じていました。
私がWeb制作の仕事をしている根底にも、「人とモノ、人と人を繋ぐ場を作りたい」という思いがあります。そうした中で、例えばお父さんが子どもに読み聞かせるような、誰かと誰かの間に生まれるコミュニケーションに特化した本を作ってみたいという構想を、以前から抱いていました。
今回はまず、自分なりに絵本制作の工程を一通り経験してみようという、最初のチャレンジでもありました。
社会不安と死生観に向き合い、
2026年のテーマを導き出すまで。
今回の絵本には、どのようなテーマを込められたのでしょうか?その背景についても教えてください。
毎年、年賀状を作る際には1年を振り返ってテーマを決めるのですが、今年は「自分の意志で、自分らしく歩み続ける」という言葉を据えました。これに決めた背景には、大きく分けて三つの理由があります。
一つは政治的な状況です。ネット上などで国民の意見が二分され、表面上は見えなくても、どこかギスギスとした空気を感じる世の中になってきたな、という印象がありました。
二つ目はAIの進化です。仕事の在り方や自分の生き方が問われるシーンが増え、多くの人が「AIに職を奪われるのではないか」という不安や、変化のスピードに対する戸惑いを抱えていると感じたからです。
社会的な動揺や技術への不安。それに加えて、もう一つの理由とは何だったのでしょうか?
三つ目は、親族を亡くした経験を通して、改めて「人の死」を意識するようになったことです。
大切な人を失っていく感覚や、死んでしまうとはどういうことなのかを、深く考えるようになりました。
こうした先行きの見えない状況や個人的な悲しみがあっても、時間は止まってくれません。
結局は「やるしかない」と実情を割り切り、ただただ、ずんずんと歩き続けていく。その姿の中に、絵本を手に取った方が自分なりの希望を見出してくれたら――。日々を懸命に生きる人々を応援する「エール」になればいいなと考えました。
▲どんな状況の中でも、ただ前へ進み続ける姿を描いた本編
タイトルにもなっている「ずんずん」という言葉が印象的です。この言葉を選んだのはなぜですか?
▲家族3人が並ぶ、表紙の線画
感覚的なものですが、力強く行進していくようなイメージが頭の中にありました。
アニメ『サザエさん』のオープニングで、一家が前へ進んでくるシーンが思い浮かび、あのリズムを言葉にするなら何だろうと考えたんです。
「トコトコ」よりも強く、前進する意志を感じさせる「ずんずん」という響きが一番しっくりきました。
また、淡々と歩き続ける動作と重なるように、文章も4音(4文字)の一定のリズムで統一しています。
「自分らしく歩み続ける」というテーマの一方で、絵本の中では常に誰かが主人公に寄り添って歩いていますね。ここにはどのような意図があるのでしょうか?
そこはおそらく、親族との別れから深まった「死」に対する私なりの考えが反映されているのだと思います。
人は人生の中で死別や別れを経験しますが、私は、一度出会った人は必ず自分の中の「何かしらの一部」になり、生き続けているように感じるんです。ですから、人生を歩み続ければ出会う人は増えていきますし、その先に別れが訪れたとしても、その存在がすべて消えてしまうわけではなく、一緒に歩き続けているのではないか、という気がしています。
物語の終盤でおじいちゃんおばあちゃんが亡くなっても、あえて姿を消さず、幽霊のような形で描き続けたのは、「死んでも離れているわけではない」というメッセージを込めたかったからです。
AIとの試行錯誤、4音のリズムと
「変わらない構図」へのこだわり。
今回、文章はすべて「4音(4文字)」で構成されていますが、どのように作成されたのでしょうか?
4音という制約の中で言葉を選ぶのは、想像以上に大変でした。AIに何千もの単語をリストアップさせ、その中から選んでいったのですが、名詞まで含めると候補が無限に広がってしまうため、当初はリストから外していました。
ところが、いざ文章にしようとすると言葉がうまく繋がらず、やはり名詞が必要だと気づきました。最終的には、不足している言葉を自分で日々書き留め、それらを組み合わせて形にしていきました。
今振り返ると、単語単位ではなく、最初から「4音のフレーズ」を何百通りもAIに作らせていれば、もう少しスムーズに進められたかもしれません。そこは、はじめてならではの反省点ですね。
あえて「4音」という厳しい制約を設けたことで、表現にどのような変化が生まれたのでしょうか?
正直に言えば、少し「失敗だったかな」とも思っているんです(笑)。制約を強くしすぎたせいで言葉が足りず、やや稚拙な表現になってしまったという反省があります。
ただ、大切にしたかったのは、難しくて凝った言葉を無理に使わないこと。小さなお子さんでも音として馴染めるシンプルさを目指しました。その場では意味がわからなくても、大人になる過程で「ああ、そういうことだったのか」といつか腑に落ちるような、絶妙なレベル感に抑えたかったんです。
結果として「これ、何なんだろう?」と思われてしまうかもしれませんが、それも含めて一つのチャレンジとして楽しみながら形にしました。
▲4音のリズムとフレーズを保ったまま、展開する物語
今回の絵本では、長い年月をずっと同じ構図で描いていますよね。この構成にはどのような意図があるのでしょうか?
実は、変化を際立たせるためというよりも、一つの「リズム」を作りたかったんです。私自身、絵や文章で複雑な感情を表現するのは難しいと感じていたので、あえて淡々とリズムを刻む形にしようと考えました。
4音の言葉が刻む一定のテンポと、ページをめくっても変わらない構図。その二つが重なることで、淡々と歩き続けるリズムのようなものを表現できればと思ったんです。
絵の制作においてもAIを駆使されたそうですが、同じ構図を守りながらキャラクターを成長させていく作業は難しかったのでは?
そうなんです。実はAIにとって、まったく同じレイアウトを維持するのは最も苦手なことの一つだったりします。指示を出すたびにAIが良かれと思って細部を変えてしまうので、その変化を食い止めるのが本当に大変でした。
成長していく主人公の顔立ちを崩さず、それでいて確実に年齢を重ねさせる。その絶妙なさじ加減にはかなりの時間を費やしました。加えて、水彩画特有のムラや色味の指定にも苦労しましたね。
指示の言葉選びが非常に難しく、具体的なサンプルをAIに与えてしまうと、今度はそのイメージに縛られて新しいものが描けなくなる。そうしたジレンマもあり、まさに試行錯誤の連続でした。
▲初期ラフ案と人物モデル
AIを活用したからこそ得られた表現や、逆に「自分らしさ」や「温もり」を込めた部分はどこですか?
水彩画らしい繊細な風合いは、AIがとてもいい塩梅で仕上げてくれました。これを自力で再現しようとすれば気が遠くなる作業ですが、そこは技術の進歩を強く感じましたね。
一方で、AIに任せきりにするとキャラクターの目が整いすぎてしまい、人間味や温かみが消えてしまうんです。
AIはあえて崩したような表情を「正しくない」と判断して補正しようとしますが、私は「あの目でありたい、あの鼻でありたい」と、守りたい表情をキープするために何度も指示を重ねました。単に綺麗なだけの絵ではなく、どこか心に引っかかる「体温」を感じるような表情を残したかったんです。
▲調整段階の背景と人物
デジタル印刷の印象を覆す、超高精細ならではの自然な仕上がり。
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製本方法には、何かこだわりがあったのですか?
実際のところ、絵本の製本について詳しい知識があったわけではありません。ただ、いわゆる“絵本らしい絵本”を作りたいという思いがあり、ハードカバーという形にはこだわりました。
年賀状としての制作ではありましたが、私の中では「年賀状らしさ」よりも「作品としての完成度」を優先しています。例えば昨年はボードゲームを制作し、箱のクオリティを追求しました。
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正直、驚きました。デジタル印刷はもっとテカテカした、コピー機のような質感になるのかなと想像していたのですが、実物はとても自然に紙に馴染んでいました。モニターで見ていた発色もそのまま再現されていて、このクオリティのものが少部数から作れるというのは、本当にすごいと感じました。
絵本が完成したときの心境はいかがでしたか?
やっと苦悩から解放された、という感じです(笑)。
毎年、制作中は本当に苦しくて「来年は絶対にもう作らない!」と心に決めるんです。「こんなこと、もうやってられない」って。でも、時期が来ると、気づけば作り始めてしまう。宮崎駿監督が映画を完成させるたびに引退宣言をして、しばらくするとまた新作に掛かる……あの心境に、どこか似ているのかもしれませんね(笑)。
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お子さんにあげてしまうパターンが多いみたいで、実際に子どもが読んでいる写真が送られてきたりもしています。
あとは同業というか、クリエイティブな視点で見てくれる方から「チャレンジとして面白い」と評価していただくこともあり、概ね良い反応をいただけています。
「自分には才能がないから」と一歩踏み出せない方に、アドバイスをいただけますか。
今の時代、AIというツールもありますし、「やれない」ということはそれほどないと思うんです。
もし一人で無理なら、誰かと一緒に作ってもいい。諦める前に、まずは自分の思いを助けてくれる道具や、支えてくれる人を探してみてほしいです。
「諦めないこと」を、一度やってみてほしいなと思います。
最後に、「ガップリ!の絵本」サービスを利用された感想をお願いします。
制作に時間がかかり、入稿がかなり遅れてしまったのですが、年始に間に合わせるため、数日でも前倒しできるよう調整してくださいました。その柔軟な対応には本当に感謝しています。ありがとうございました。
「絵も文章も得意ではない」というりみさんが、AIを駆使して作り上げたこの一冊。
そこには、技術だけでは語れない温かさが宿っていました。
時代に惑わされず「ずんずん」と歩んでいくその姿勢に、勇気をもらえるようなインタビューでした。
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画/谷口マリエ様
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