オリジナル絵本 制作者インタビュー『ふがしやのコトン』

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オリジナル絵本 インタビュー
『ふがしやのコトン』

創業70年の伝統駄菓子「ふがし」の自社キャラクター「コトン」の絵本『ふがしやのコトン』

/ 創業70年の伝統を絵本で次世代へ。 /
ふがしと子どもの未来を繋ぐ「コトン」の挑戦。

創業以来、約70年にわたり「ふがし」の味を守り続けてきた茨城県の水野製菓様。しかし、食の多様化が進む現代、伝統的な駄菓子の需要は年々減少の一途をたどっています。そんな現状に危機感を抱き、「味を伝える前に、まず存在を知ってもらおう」と、自社キャラクター「コトン」を主人公にした絵本制作という大胆な一手を決意しました。クラウドファンディングを活用し、全国の保育園や幼稚園へ寄贈を行うこのプロジェクトには、絵本をふがしと同様に「世代を超えたコミュニケーションの架け橋」にしたいという熱い想いが込められています。制作を主導した水野康行さんに、制作秘話をうかがいました。

」をえるに、「存在」をってもらうための入り口

まずは、水野製菓様がどのような歩みをされてきたのか、お聞かせいただけますか?

一言で申し上げますと、約70年間にわたり「ふがし」の製造と販売を一筋に続けてきた会社です。
1961年(昭和36年)の創業以来、代を重ねて今日に至っています。

水野製菓様が代々製造・販売している「ふがし」

▲水野製菓様が代々製造・販売している「ふがし」

  

ふがし一筋の御社が、今回なぜ「絵本」という全く異なる形での発信を選ばれたのでしょうか?

     
▲作中で活躍するキャラクター「コトン」

▲作中で活躍するキャラクター「コトン」

非常に切実な背景があります。長く続けてきましたが、ふがしの製造量や注文は年々減少しており、正直なところチョコレートなどの人気菓子に対抗するのが難しくなっています。今では、子どもたちがスーパーで自ら手に取ることが少ないお菓子になってしまいました。
そこで、いきなり「味」の良さを押し出すのではなく、まずは「キャラクター」という親しみやすい入り口から、お子さまたちに知ってもらう方がよいのではと考えました。

まずは存在を知ってもらうための媒体が必要だったのですね。
その中で「絵本」を選ばれたのはどうしてですか?

絵本を教育現場で読み聞かせる様子

▲絵本は、教育現場でも活用しやすいツールのひとつ

ふがしは、昔はおじいちゃんやおばあちゃん、親に教えてもらってはじめて食べる、という経験が一般的でしたよね。私自身もそうでした。
一方で絵本も、読み聞かせを通じて、親と子、祖父母と孫など、世代を超えたコミュニケーションが自然に生まれるツールです。
私にも3歳になったばかりの子どもがおり、実際に読み聞かせをしている中で、「絵本がふがしを次世代へ繋ぐ架け橋になる」と感じるようになりました。

制作にあたってクラウドファンディングを実施されたそうですが、その目的を教えてください。

       

クラウドファンディングの最大の目的は、利益を上げることではなく、とにかく「広めること」でした。
集まった資金は、絵本の制作費と全国の保育園や幼稚園へ発送するための費用としてすべて使い切りました。支援者の方が送り先をリクエストできる仕組みにしたのですが、「消えゆくふがしを残したい」「次世代に繋げたい」という私たちの想いに、多くの方が共感してくださいました。

クラウドファンディングに賛同した企業名を記載した奥付

▲奥付にはクラウドファンディングに賛同した企業名を記載

  

このプロジェクトを通して、何か新たな発見や変化はありましたか?

       

実感として大きいのは、自社の通販サイトの会員数が倍近くに増えたことです。正確な流入経路までは分析しきれていませんが、絵本を読んだお子さんが「ふがしを食べてみたい」と言ってくれた結果ではないかと考えています。
一方で、支援者の年齢層を見ると40代以上が多く、20〜30代が非常に少ないという課題も見えてきました。この世代は、ふがしを食べる機会が少なく、懐かしさとしても響きにくい、いわば「空白の世代」なのかもしれません。ここをどうターゲットにしていくかが、次の展開への大きなヒントになりました。

会社一丸となってげた
こだわり一冊」。

物語の主人公「コトン」についてですが、顔がふがしの「ふ」になっていて、一度見たら忘れられない可愛さですね。誕生の秘話はありますか?

     
キャラクターのモデルになった実際の愛犬「コトン」

▲キャラクターのモデルになった実際の「コトン」

モデルは、私が家で飼っている愛犬の「コトン」です。ビション・フリーゼという犬種で、真っ白でフワフワした見た目が特徴です。ふがしも、食べるとサクサク・フワフワしていますよね。その共通点からキャラクターにしました。名前は妻がつけたのですが、コットン(綿)のような見た目から名付けられました。
今後はキャラクターグッズの展開も視野に入れており、すでに動き始めています。ガチャガチャやぬいぐるみなど、さまざまに検討しているところです。引き出しにしまうものではなく、家に置いて、ふとしたときに目に入ることで、ふがしを思い出してもらえる存在になればと考えています。

物語のコンセプトや、子どもたちに一番伝えたいメッセージはどのようなことだったのでしょうか?

       

物語は、主人公のコトンがおじいさんに弟子入りし、ふがし作りを教わるというシンプルな構成です。
コトンの行動原理は「やりたいからやる」「好きだから好き」という、素直でまっすぐなものにしました。
今の子どもたちは、少し賢くなりすぎている気がしています。だからこそ、「理由なんて単純なものでいいんだよ」「やりたいなら迷わずやってみよう」というメッセージを込めました。
また、何度も失敗してもあきらめずに挑戦し、最後には成功する——そんな姿も大切に描いています。

ふがし作りに励むコトンの多様な姿に、大人も子どもも夢中に

▲ふがし作りに励むコトンの多様な姿に、大人も子どもも夢中に

  

伝統的な「職人の世界」を絵本にする際、特にこだわった描写はありますか?

       

師匠となるおじいさんのキャラクターですね。実際の世界はもっと厳しい修業の日々ですが、今の時代に合わせて、影で見守る仏さまのような優しい存在として描きました。
製造工程についても、現在は機械化されている部分もありますが、昔ながらの作り方を忠実に再現しています。
また、のれん分けのようなシーンは、私たちの実体験をベースにしたエピソードです。先代は自分で作って配達までこなしていましたが、腰を痛めてからはそれができなくなりました。おじいさんが次の世代にふがしの未来を託す姿は、まさに私たちが繋いできた伝統の継承そのものです。
さらに、最後にはお客さまにふがしが喜ばれることで、コトン自身もふがしへの愛着を深めていく様子を描きました。職人の日常の喜びや、作った甲斐を感じる瞬間も、絵本の中に反映しています。

コトンのお店が完成した一ページ

▲コトンのお店が完成した一ページ

  

絵・作を担当された「コトンくりえいたーず」とは、どのような制作チームですか?

       

「コトンくりえいたーず」は、社内のデザイナーや社員、パートスタッフなどで構成された制作チームです。
絵本のストーリーの起承転結は私が作成し、それをベースに、みんなで相談しながらブラッシュアップしました。
絵が得意な社員が作画を担当し、パートの方々からも「擬音を増やしたほうが子どもが喜ぶよ」といったリアルな意見を多くもらい、それらを反映しながら制作を進めました。

ふがしへの味とイメージがふくらむ、ぱくっ、サクッ、ふわ、などのオノマトペが載った見開きページ

▲ふがしへの味とイメージがふくらむ、ぱくっ、サクッ、ふわ、などのオノマトペ

  

文章やデザインで特にこだわった点はありますか?

       

読み聞かせを想定していたため、フォントの大きさにはかなり悩みました。絵本は絵を見ながら読むので、文字が小さすぎると見づらいですし、読み聞かせをする方が老眼の場合もあります。
最終的には、誰にとっても読みやすい今の大きさに落ち着きました。
また、ストーリーやイラストも、シンプルでわかりやすく、親しみやすいものになるよう心がけました。コトンの「ふ」と書かれた愛くるしい顔も、繰り返し読んでもらうためのちょっとした仕掛けです。
疲れたときに、ほっと癒される存在になればと思っています。

100周年けて。
ふがしを「せるお菓子」へ。

今回、ガップリ!の絵本を選ばれた理由は何ですか?

       

納期と料金が非常に良心的だったこと、そして対応の丁寧さが決め手でした。モニターや大量部数のお値引きなども含め、他にはない柔軟な対応があり、「できる限り早く納品できるよう頑張ります」といった姿勢も印象的でした。
本当に対応が素晴らしく、ガップリ!さんにお願いして良かったと思っています。

ガップリ!の絵本の特長でもある「ハードカバー」や「糸かがり綴じ」に、こだわりがありましたか?

       

ハードカバーは、何度も読み聞かせをすることを考えると絶対条件でした。絵本といえばハードカバーのイメージもありますしね。綴じ方については特にこだわりはありませんでしたが、結果的に糸かがり綴じにして正解だと思っています。丈夫で長く読み続けられるのも、ありがたいですね。

絵本のサイズやページ数はどのように決められたのですか?

       

当初は32ページ以上ありましたが、読み聞かせのしやすさを最優先し、最終的に32ページにまとめました。パートの方からも「長すぎると読み聞かせで疲れてしまう」といった声があり、育児経験者ならではの意見を反映しています。
また、「絵だけで見せるページが欲しい」という要望も取り入れ、メリハリのある構成にしました。サイズは実際に手に取ってみて「このくらいがちょうどいい」と感じたB5の横型を採用しています。ご家庭での親子の読み聞かせには扱いやすいサイズですが、保育園など多人数での読み聞かせには少し小さかったかな、というのが反省点ですね。

保育園や幼稚園など、たくさんの子どもたちに読み聞かせをしている様子

▲保育園や幼稚園など、たくさんの子どもたちに読み聞かせをしている様子

  

本製作前に仮製本をお送りしていますが、仮製本はどのように役立ちましたか?

       

納品前にサンプルをいただけたのは本当に助かりました。サンプル対応がないところもある中で、仕上がりを事前に確認できるのは大きな安心材料になります。実際に色味やレイアウトをチェックし、読み聞かせを想定して指にかかる文字を内側へ移すなど、細かい調整にも活かせました。

絵本が完成して手に取ったときの感想を教えてください。

       

みんなで作り上げてきたものが形になったことを実感し、とても嬉しかったです。
制作中は意見のぶつかり合いもありましたが、納品時には自分たちの思いが一つになったと感じました。
製品自体も素晴らしく、頑丈でハードカバーにして正解でしたし、糸かがり綴じにしたことも満足しています。ガップリ!さんにお願いして本当に良かったと思っています。

絵本は、クラウドファンディングのリターンや保育園などに寄贈されているんですよね?
他の活用法も考えていらっしゃるんですか?

       

まだ在庫は十分あるので、オンラインショップの通販用にも活用していく予定です。保育園などにはすでに一施設一冊ずつ、ふがしと一緒に寄贈しています。数が多く、なかなか減らないので、できれば本屋さんにも並べたいと思っているのですが、その方法はまだ模索しているところです。
子どもたちの反応も少しずつ届いています。はじめてふがしを食べる子も多く、絵本のストーリーと一緒に楽しむことで、単にお菓子を食べるのとは違った体験になっているようです。
「ママに教えたい」という声もあり、絵本とふがしが一体になった価値を感じてもらえているのが嬉しいですね。

今後、子どもたちにとって、ふがしや絵本がどのような存在になってほしいと願っていますか?

     
▲ふがしへの思いを込めて、幼稚園や教育施設に寄贈された絵本

▲ふがしへの思いを込めて、寄贈された絵本

デジタル社会になり、世代間の繋がりが少しずつ分断されているように感じます。特にお年寄りと若者の間で。そんな中で、絵本やふがしが世代を超えたコミュニケーションの架け橋になってくれたら、本当に嬉しいですね。
また、創業100周年に向けては、京都の八ツ橋のような存在を目指したいと考えています。毎日でなくても、その場に行けば「やっぱりこれが食べたい」とふと思い出してもらえる——そんな“定番”のお菓子でありたいと考えています。そのために、キャラクターやグッズなどを通じて、日常の中で親しまれる工夫を重ねていきたいです。これからも、長く愛されるお菓子メーカーであり続けられるよう頑張ります。

最後に、ガップリ!の絵本を利用された感想を、お聞かせください。

       

重ねてにはなりますが、スタッフのみなさんの対応や絵本のクオリティなど、どれも本当に満足しています。手厚いサービスで、安心してお願いすることができました。

伝統を守るために、あえて畑違いの絵本制作という「挑戦」を選んだ水野製菓様。
愛犬をモデルにしたコトンの物語には、職人の誇りと、これからの時代に「ふがし」という文化を繋いでいこうとする、真摯な願いが溢れていました。貴重なお話をありがとうございました。

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