オリジナル絵本 インタビュー
『TASCぎふコラボ展vol.8 虹色の木の下で』
/ 「二人で絵本を作りたい!」という思いを /
制作チームによって実現し、「コラボ展」で公開へ。
虹色の木のある家に住みついたネコの王子が、訪れたネコやリスの悩みを聞いて、励ますという絵本です。障がい者の芸術文化活動を支援する「TASCぎふ」のアトリエで絵を描いていたnaomiさんと丹賀澤賢さんの「いっしょに絵本を作りたい」という思いを実現するためにチームを結成し、「コラボ展」という展示会で完成した絵本とその制作過程を公開しました。制作チームのみなさんやTASCぎふのスタッフの方にお話をうかがいました。
回答者(本文中は敬称略)は以下のとおりです。
- naomiさん=『虹色の木の下で』のストーリー案や絵を担当
- 丹賀澤さん=『虹色の木の下で』のストーリー案をもとに文章を担当
- 金田さん=『虹色の木の下で』の監修者
- TERAMAKIさん=『虹色の木の下で』の記録映像を担当
- 井川さん=「TASCぎふ」スタッフ
- 二村さん=「TASCぎふ」スタッフ
オープンアトリエでは、パステルでよく絵を描いていたのですが、その絵を見て
丹賀澤さんが「いっしょに絵本を作ってみたい」と言ってくれたんです。
「TASCぎふ」は、どういった団体で、どのような活動をされているのですか。
二村:「TASCぎふ」の正式名称は、「岐阜県障がい者芸術文化支援センター」と言います。2018年から、「ぎふ清流文化プラザ」という施設を拠点に、障がい者の芸術活動の普及を促す名目で、舞台や身体パフォーマンス、美術といった、障がいのある方たちのアートに関するあらゆる取り組みをサポートしています。その活動の一つに「TASCぎふコラボ展」があり、今回で8回目になります。これは、岐阜県内のアーティストと障がい者の方たちが、チームを組んでコラボ制作をするというイベントです。この「TASCぎふコラボ展 vol.8」では、今回の絵本『虹色の木の下で』の紹介とともに、チームとして絵本制作に取り組んだ記録を展示しました。
素晴らしい取り組みですね。このコラボ展は、どのような目的ではじめられたのでしょうか。
井川:障がい者とか、アーティストとか、それぞれ一括りにして捉えがちですが、障がいのある方も一人ひとり違いますし、アーティストも一人ひとり違います。その人たちがコラボ展をきっかけに直接会うことで、お互いを知る機会を作るというのが目的の一つです。そして、コラボ展での展示によって、こういった取り組みを一般の人たちにも知っていただき、広めていきたいと思っています。
naomiさんがTASCぎふさんに関わるようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか。
naomi:以前、別の職に就いていたころ、仕事のほかに何かできることがあったほうがいいなと思っていました。それで、もともと絵は描いていたのですが、体調を崩したことをきっかけに、衝動的に再び描き始めたんです。そんなとき、世のなかに「障がい者アート」というジャンルがあることや、岐阜にTASCぎふが運営しているオープンアトリエがあると知ったので、4年ぐらい前からそのアトリエに通って絵を描くようになりました。いつもは主にパステルを使って絵を描いていて、絵本を作ったのは今回がはじめての体験でした。
丹賀澤さんは、どのような経緯でTASCぎふさんと関わりを持ったのでしょうか。
丹賀澤:僕は最初デザインの学校に通っていて、絵を描くのが好きでした。その後、病院で、治療を兼ねてカウンセリングの先生といろいろ話していたときに、TASCぎふという障がい者のための文化支援センターができたというお話を聞いたんです。それでTASCぎふに話を聞きに行ったら、オープンアトリエがあるから参加しませんかと言われて、毎月のように通うようになり、そこでnaomiさんとも知り合いました。現在はデザインもお話も絵もマルチで創作しています。
お二人はオープンアトリエで知り合われたんですね。今回は、どうしてこのお二人でのコラボ展になったのでしょうか。
二村:以前から、お二人で何かできるといいなという話を聞いていたので、TASCぎふコラボ展を行うにあたって、何か二人でやってみませんかと、お声をかけさせていただいたのがきっかけです。
なぜ、制作物に絵本を選ばれたのですか。
naomi:オープンアトリエでは、パステルでよく絵を描いていたのですが、その絵を見て、丹賀澤さんが「いっしょに絵本を作ってみたい」と言ってくれたんです。それに、もともと絵本を描いてみたいという思いもありました。
二村:お二人とも文章も書けるし絵も描けるから、二人をかけあわせたような絵本ができるのではないかと、ちょこちょこ話していたような記憶があります。
丹賀澤:僕は、もともと絵に合わせて文章を作っていました。その作品をnaomiさんが見てくれたおかげで刺激をうけ、絵本が作れるんじゃないかなと思っていたところに今回のお話をいただき、それがきっかけとなって絵本を制作することにしました。
「TASCぎふ」という場所が
虹色の木なのではないかなと、私は思いました。
この絵本はお二人の経験や感じてきたことから、「願いは叶う」「想いは伝わる」をキーフレーズにし、その想いを込めたということですが、実際にどのような経験をされたのでしょうか。
丹賀澤:僕はデザインの専門学校に通っていましたが、それと同時に病院へも通っていたので、正直すごく厳しくて、結局、卒業時にデザイン会社に就職することができなかったんです。でも、そこで諦めず、何とかして治療を終えて、だんだん症状が軽くなってきたところでデザイン会社に入社でき、インテリアデザイナーとして仕事ができたので、そこで夢が叶いました。
naomi:私は子どものころから、大きなことでも小さなことでも自分の心のやりたいという声を大事にしてきました。不思議なことに、やりたいと思い続けていると、それを叶えてくれるような仲間たちに出会えることも多くあり、今回もその気持ちを大事にコツコツやっていたら、自分の心が求めることを実現してくれる仲間たちに出会えました。
その仲間たちというのは今回の絵本制作のメンバーのことだと思いますが、チーム編成はどのように決められたのでしょうか。
二村:naomiさんと丹賀澤さんのお二人が最初に思い浮かびました。ただ、本を作るとなると私たちは素人ですし、お二人もわからないところがあるので、本づくりのスペシャリストが必要だと思いました。そこで、高校や大学で絵本づくりを教えている金田典子先生にご協力をお願いしました。また、今回でコラボ展参加3回目となる、映像演出や制作をしているTERAMAKIさんに、制作過程の記録をお願いしました。
制作は、どのような流れで進めていかれたのでしょうか。
金田:naomiさんと丹賀澤さんをサポートしながらも、話を私の都合のいいように誘導せず、二人が話し合って決めたことを大事にしていきたいと考えていました。
naomi:月に1回ぐらい集まって話し合いをするときに、みなさんの話している言葉を書きとめて持ち帰っていました。それで、何をすればいいかを考えて、その考えを次の話し合いで伝えるというように、みんなの心を合わせることを大切にしました。
丹賀澤:naomiさんの絵を見た瞬間に、この場面はどういうイメージで描いたのか、とても強く伝わってきたので、文章もそれに合わせて書くというように、最終段階までnaomiさんの気持ちをくみながら制作しました。
TERAMAKI:私は聞かれたことには答えるけど、特に自分から意見はしないように、できるだけ二人が発する言葉を記録で拾うことをとても意識していました。
物語の重要なモチーフである「虹色の木」は何を象徴しているのでしょうか。
金田:絵本を読んだ方が、虹色の木をどう思われるかはその方にお任せするとして、ここの「TASCぎふ」という場所が虹色の木なのではないか、その木の下に集ってお話を聞いたり、そこから何か気づきを得たり、そういう場所ではないかなと私は思いました。
丹賀澤:僕は以前、カウンセリングを受けていた先生から、とある病院に普通の木の絵があって、患者さんがお亡くなりになる前に葉っぱを1枚ずつ貼っていくという話を聞きました。その葉が無数にあって、それが虹色の木になっているのだそうです。亡くなった方たちを偲ぶ、そんな素敵な木があるんだったら、自分たちも作ってみたいと思いました。
来場者の方とコミュニケーションをとりたいということで、
来場したみなさんの夢や願いをハート形の紙に書いてもらったり、
写真を撮るフォトスペースを設けたりしました。
絵本が完成したときの感想をお聞かせください。
naomi:はじめて絵本ができて、見せていただいたときは喜び、感動しました。
丹賀澤:僕も絵本を作ったのは、はじめてだったので、本当に完成するとは夢にも思わなかったです。
金田:絵本を手にしたときは感動しましたね。お二人の願いを実現するためのサポートができたことは、とてもうれしかったです。
TERAMAKI:最初はとにかく感動しかなくて、これは自分の宝物だと思いました。私は写真を撮って写真集なども作るのですが、こんなに一つの作品が完成したことに感動したのは、はじめてでした。ただの記録係ではなく、チームメンバーの一人として関われたことがとてもよかったです。
コラボ展のほうでは、物語に出てくる家の模型があったり、キャラクターの配色をどのように決めたかがわかるシートが貼ってあったり、おもしろい展示をされていますが、反響はいかがでしたか。
井川:naomiさんと丹賀澤さんが、展示するだけではなく来場者の方とコミュニケーションをとりたいということで、来場したみなさんの夢や願いをハート形の紙に書いてもらったり、写真を撮るフォトスペースを設けたりしました。その結果、貼るところがなくなるくらい、みなさんに書いていただけました。みなさんの滞在時間も長く、小さなお子さんから年配の方まで、じっくり見ていらっしゃいました。
金田:どうやったら絵本の世界観を一体として見せられるか、ディスプレイはすごく悩んだんですけれども、絵本を作る当初からnaomiさんと丹賀澤さんには、模型やラフスケッチなどは取っておいてねとお願いしていました。絵本の中身をラフスケッチなども含めて、全部見ていただくチャンスはなかなかないので、それをお見せする機会をいただけたのはすごくよかったですね。
コラボ展では、読み聞かせやオンライン鑑賞会を行ったそうですが、やってみていかがでしたか。
二村:私たちは、やはり障がい者の方も対象にしているので、会場になかなか来られない方のために、オンラインで鑑賞会をすることは毎回してきました。直接来られないお客さまにも雰囲気は味わっていただきました。また、今回は福祉施設で絵本の読み聞かせをnaomiさんにお願いしました。
金田:絵本を読み聞かせして、うまく伝わるかどうかちょっと自信がなかったんですけれど、ちゃんと聞いて、意味を理解して、最後に感想を言ってくださった障がい者の方がいて、naomiさんと丹賀澤さんが大事にしていた想いがきちんと伝わって、本当によかったねって思いました。
naomi:とにかく、はじめましての人の前でゆっくり伝わるように必死で読みました。伝えたいことを理解してくださる方もいて、届いたような感じがあってうれしかったです。創作はしているけれど、実際、人に会って作品を声で届けることはなかなかないので、そういう体験ができてよかったです。
コラボ展で使用したほか、絵本はどのように活用されていらっしゃいますか。
井川:私たちの事務所のとなりに子育て支援スペース「みなたん」という、親子でのんびりできる場所がありまして、そこに1冊寄贈しました。
金田:私が主催しているサークルが、東日本大震災以降、福島の子どもたちと交流があって、高校生や大学生が自作の絵本を読み聞かせたりしています。その活動のなかで、福島の図書館とか幼稚園・保育園協会というところに毎年絵本をお渡ししているのですが、この絵本もそちらにお渡しして、福島の障がい者関係の施設にも配っていただこうと計画しています。
お二人は今後、何か作りたい作品などはございますか。
naomi:大好きなアイドルが、東北被災地の支援活動に協力している姿を見て、自分にも何かできないかと考えていました。ですから、金田先生が被災地に本を届ける活動をしているとうかがったときに、私も被災地と交流ができると思いうれしかったんです。その思いを大切にして、また何か作れる機会があったらいいなとは思っています。
丹賀澤:僕は変わらずに絵を描きつつ、絵が完成したときに浮かんだ文字を一緒に添えて残しておいたり、Instagramに載せたりしていきたいです。そこに感想をいただけたら、うれしいですね。自分のなかにあるものは描かないと消えていってしまうので、完成するまでずっと描くことを続けます。
最後に、「ガップリ!の絵本」を選んでいただいた理由や、利用した感想をお聞かせください。
井川:金田先生のご紹介で選びました。
金田:以前、姉が個展を開くときに、記念に私と二人で絵本を作ろうということになりました。そこで探し出したのが、「ガップリ!の絵本」さんだったんです。そのとき、とてもていねいにやり取りしていただいたこともあり、naomiさんと丹賀澤さんが絵本を作るときに、ご紹介しました。
井川:こちらのコピー機でスキャンしたデータでは、パステルの色がうまく出なかったので、原画をお渡ししてスキャニングをお願いしました。印刷も当初はパステルの色が全然うまく出なくて、何回もメールと電話でやり取りしたのですが、ここまでやってもらって大丈夫なのかと思いました。また、モニター割引もあり、その分ほかのことで予算が使えたので、大変ありがたかったです。
金田:ハーフトーンがなかなか難しいところでしたが、印刷されて上がってきたものをもう一度校正して、「ここをこうしてほしい」というやり取りもちゃんとしていただきましたし、色味は原画とそれほど差がなくなり、きれいな色調で、担当者の方には感謝しております。
コラボ展の反省会でみなさんお集まりのところ、お話をうかがいました。
チームのみなさんはお互いを尊重し、思いやりにあふれていて、
だからこんな温かい絵本ができたんだなと実感しました。
お話、ありがとうございました!
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オープンアトリエでは、パステルでよく絵を描いていたのですが、その絵を見て
丹賀澤さんが「いっしょに絵本を作ってみたい」と言ってくれたんです。
「TASCぎふ」は、どういった団体で、どのような活動をされているのですか。
二村:「TASCぎふ」の正式名称は、「岐阜県障がい者芸術文化支援センター」と言います。2018年から、「ぎふ清流文化プラザ」という施設を拠点に、障がい者の芸術活動の普及を促す名目で、舞台や身体パフォーマンス、美術といった、障がいのある方たちのアートに関するあらゆる取り組みをサポートしています。その活動の一つに「TASCぎふコラボ展」があり、今回で8回目になります。これは、岐阜県内のアーティストと障がい者の方たちが、チームを組んでコラボ制作をするというイベントです。この「TASCぎふコラボ展 vol.8」では、今回の絵本『虹色の木の下で』の紹介とともに、チームとして絵本制作に取り組んだ記録を展示しました。
素晴らしい取り組みですね。このコラボ展は、どのような目的ではじめられたのでしょうか。
井川:障がい者とか、アーティストとか、それぞれ一括りにして捉えがちですが、障がいのある方も一人ひとり違いますし、アーティストも一人ひとり違います。その人たちがコラボ展をきっかけに直接会うことで、お互いを知る機会を作るというのが目的の一つです。そして、コラボ展での展示によって、こういった取り組みを一般の人たちにも知っていただき、広めていきたいと思っています。
naomiさんがTASCぎふさんに関わるようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか。
naomi:以前、別の職に就いていたころ、仕事のほかに何かできることがあったほうがいいなと思っていました。それで、もともと絵は描いていたのですが、体調を崩したことをきっかけに、衝動的に再び描き始めたんです。そんなとき、世のなかに「障がい者アート」というジャンルがあることや、岐阜にTASCぎふが運営しているオープンアトリエがあると知ったので、4年ぐらい前からそのアトリエに通って絵を描くようになりました。いつもは主にパステルを使って絵を描いていて、絵本を作ったのは今回がはじめての体験でした。
丹賀澤さんは、どのような経緯でTASCぎふさんと関わりを持ったのでしょうか。
丹賀澤:僕は最初デザインの学校に通っていて、絵を描くのが好きでした。その後、病院で、治療を兼ねてカウンセリングの先生といろいろ話していたときに、TASCぎふという障がい者のための文化支援センターができたというお話を聞いたんです。それでTASCぎふに話を聞きに行ったら、オープンアトリエがあるから参加しませんかと言われて、毎月のように通うようになり、そこでnaomiさんとも知り合いました。現在はデザインもお話も絵もマルチで創作しています。
お二人はオープンアトリエで知り合われたんですね。今回は、どうしてこのお二人でのコラボ展になったのでしょうか。
二村:以前から、お二人で何かできるといいなという話を聞いていたので、TASCぎふコラボ展を行うにあたって、何か二人でやってみませんかと、お声をかけさせていただいたのがきっかけです。
なぜ、制作物に絵本を選ばれたのですか。
naomi:オープンアトリエでは、パステルでよく絵を描いていたのですが、その絵を見て、丹賀澤さんが「いっしょに絵本を作ってみたい」と言ってくれたんです。それに、もともと絵本を描いてみたいという思いもありました。
二村:お二人とも文章も書けるし絵も描けるから、二人をかけあわせたような絵本ができるのではないかと、ちょこちょこ話していたような記憶があります。
丹賀澤:僕は、もともと絵に合わせて文章を作っていました。その作品をnaomiさんが見てくれたおかげで刺激をうけ、絵本が作れるんじゃないかなと思っていたところに今回のお話をいただき、それがきっかけとなって絵本を制作することにしました。
「TASCぎふ」という場所が
虹色の木なのではないかなと、私は思いました。
この絵本はお二人の経験や感じてきたことから、「願いは叶う」「想いは伝わる」をキーフレーズにし、その想いを込めたということですが、実際にどのような経験をされたのでしょうか。
丹賀澤:僕はデザインの専門学校に通っていましたが、それと同時に病院へも通っていたので、正直すごく厳しくて、結局、卒業時にデザイン会社に就職することができなかったんです。でも、そこで諦めず、何とかして治療を終えて、だんだん症状が軽くなってきたところでデザイン会社に入社でき、インテリアデザイナーとして仕事ができたので、そこで夢が叶いました。
naomi:私は子どものころから、大きなことでも小さなことでも自分の心のやりたいという声を大事にしてきました。不思議なことに、やりたいと思い続けていると、それを叶えてくれるような仲間たちに出会えることも多くあり、今回もその気持ちを大事にコツコツやっていたら、自分の心が求めることを実現してくれる仲間たちに出会えました。
その仲間たちというのは今回の絵本制作のメンバーのことだと思いますが、チーム編成はどのように決められたのでしょうか。
二村:naomiさんと丹賀澤さんのお二人が最初に思い浮かびました。ただ、本を作るとなると私たちは素人ですし、お二人もわからないところがあるので、本づくりのスペシャリストが必要だと思いました。そこで、高校や大学で絵本づくりを教えている金田典子先生にご協力をお願いしました。また、今回でコラボ展参加3回目となる、映像演出や制作をしているTERAMAKIさんに、制作過程の記録をお願いしました。
制作は、どのような流れで進めていかれたのでしょうか。
金田:naomiさんと丹賀澤さんをサポートしながらも、話を私の都合のいいように誘導せず、二人が話し合って決めたことを大事にしていきたいと考えていました。
naomi:月に1回ぐらい集まって話し合いをするときに、みなさんの話している言葉を書きとめて持ち帰っていました。それで、何をすればいいかを考えて、その考えを次の話し合いで伝えるというように、みんなの心を合わせることを大切にしました。
丹賀澤:naomiさんの絵を見た瞬間に、この場面はどういうイメージで描いたのか、とても強く伝わってきたので、文章もそれに合わせて書くというように、最終段階までnaomiさんの気持ちをくみながら制作しました。
TERAMAKI:私は聞かれたことには答えるけど、特に自分から意見はしないように、できるだけ二人が発する言葉を記録で拾うことをとても意識していました。
物語の重要なモチーフである「虹色の木」は何を象徴しているのでしょうか。
金田:絵本を読んだ方が、虹色の木をどう思われるかはその方にお任せするとして、ここの「TASCぎふ」という場所が虹色の木なのではないか、その木の下に集ってお話を聞いたり、そこから何か気づきを得たり、そういう場所ではないかなと私は思いました。
丹賀澤:僕は以前、カウンセリングを受けていた先生から、とある病院に普通の木の絵があって、患者さんがお亡くなりになる前に葉っぱを1枚ずつ貼っていくという話を聞きました。その葉が無数にあって、それが虹色の木になっているのだそうです。亡くなった方たちを偲ぶ、そんな素敵な木があるんだったら、自分たちも作ってみたいと思いました。
来場者の方とコミュニケーションをとりたいということで、
来場したみなさんの夢や願いをハート形の紙に書いてもらったり、
写真を撮るフォトスペースを設けたりしました。
絵本が完成したときの感想をお聞かせください。
naomi:はじめて絵本ができて、見せていただいたときは喜び、感動しました。
丹賀澤:僕も絵本を作ったのは、はじめてだったので、本当に完成するとは夢にも思わなかったです。
金田:絵本を手にしたときは感動しましたね。お二人の願いを実現するためのサポートができたことは、とてもうれしかったです。
TERAMAKI:最初はとにかく感動しかなくて、これは自分の宝物だと思いました。私は写真を撮って写真集なども作るのですが、こんなに一つの作品が完成したことに感動したのは、はじめてでした。ただの記録係ではなく、チームメンバーの一人として関われたことがとてもよかったです。
コラボ展のほうでは、物語に出てくる家の模型があったり、キャラクターの配色をどのように決めたかがわかるシートが貼ってあったり、おもしろい展示をされていますが、反響はいかがでしたか。
井川:naomiさんと丹賀澤さんが、展示するだけではなく来場者の方とコミュニケーションをとりたいということで、来場したみなさんの夢や願いをハート形の紙に書いてもらったり、写真を撮るフォトスペースを設けたりしました。その結果、貼るところがなくなるくらい、みなさんに書いていただけました。みなさんの滞在時間も長く、小さなお子さんから年配の方まで、じっくり見ていらっしゃいました。
金田:どうやったら絵本の世界観を一体として見せられるか、ディスプレイはすごく悩んだんですけれども、絵本を作る当初からnaomiさんと丹賀澤さんには、模型やラフスケッチなどは取っておいてねとお願いしていました。絵本の中身をラフスケッチなども含めて、全部見ていただくチャンスはなかなかないので、それをお見せする機会をいただけたのはすごくよかったですね。
コラボ展では、読み聞かせやオンライン鑑賞会を行ったそうですが、やってみていかがでしたか。
二村:私たちは、やはり障がい者の方も対象にしているので、会場になかなか来られない方のために、オンラインで鑑賞会をすることは毎回してきました。直接来られないお客さまにも雰囲気は味わっていただきました。また、今回は福祉施設で絵本の読み聞かせをnaomiさんにお願いしました。
金田:絵本を読み聞かせして、うまく伝わるかどうかちょっと自信がなかったんですけれど、ちゃんと聞いて、意味を理解して、最後に感想を言ってくださった障がい者の方がいて、naomiさんと丹賀澤さんが大事にしていた想いがきちんと伝わって、本当によかったねって思いました。
naomi:とにかく、はじめましての人の前でゆっくり伝わるように必死で読みました。伝えたいことを理解してくださる方もいて、届いたような感じがあってうれしかったです。創作はしているけれど、実際、人に会って作品を声で届けることはなかなかないので、そういう体験ができてよかったです。
コラボ展で使用したほか、絵本はどのように活用されていらっしゃいますか。
井川:私たちの事務所のとなりに子育て支援スペース「みなたん」という、親子でのんびりできる場所がありまして、そこに1冊寄贈しました。
金田:私が主催しているサークルが、東日本大震災以降、福島の子どもたちと交流があって、高校生や大学生が自作の絵本を読み聞かせたりしています。その活動のなかで、福島の図書館とか幼稚園・保育園協会というところに毎年絵本をお渡ししているのですが、この絵本もそちらにお渡しして、福島の障がい者関係の施設にも配っていただこうと計画しています。
お二人は今後、何か作りたい作品などはございますか。
naomi:大好きなアイドルが、東北被災地の支援活動に協力している姿を見て、自分にも何かできないかと考えていました。ですから、金田先生が被災地に本を届ける活動をしているとうかがったときに、私も被災地と交流ができると思いうれしかったんです。その思いを大切にして、また何か作れる機会があったらいいなとは思っています。
丹賀澤:僕は変わらずに絵を描きつつ、絵が完成したときに浮かんだ文字を一緒に添えて残しておいたり、Instagramに載せたりしていきたいです。そこに感想をいただけたら、うれしいですね。自分のなかにあるものは描かないと消えていってしまうので、完成するまでずっと描くことを続けます。
最後に、「ガップリ!の絵本」を選んでいただいた理由や、利用した感想をお聞かせください。
井川:金田先生のご紹介で選びました。
金田:以前、姉が個展を開くときに、記念に私と二人で絵本を作ろうということになりました。そこで探し出したのが、「ガップリ!の絵本」さんだったんです。そのとき、とてもていねいにやり取りしていただいたこともあり、naomiさんと丹賀澤さんが絵本を作るときに、ご紹介しました。
井川:こちらのコピー機でスキャンしたデータでは、パステルの色がうまく出なかったので、原画をお渡ししてスキャニングをお願いしました。印刷も当初はパステルの色が全然うまく出なくて、何回もメールと電話でやり取りしたのですが、ここまでやってもらって大丈夫なのかと思いました。また、モニター割引もあり、その分ほかのことで予算が使えたので、大変ありがたかったです。
金田:ハーフトーンがなかなか難しいところでしたが、印刷されて上がってきたものをもう一度校正して、「ここをこうしてほしい」というやり取りもちゃんとしていただきましたし、色味は原画とそれほど差がなくなり、きれいな色調で、担当者の方には感謝しております。
コラボ展の反省会でみなさんお集まりのところ、お話をうかがいました。
チームのみなさんはお互いを尊重し、思いやりにあふれていて、
だからこんな温かい絵本ができたんだなと実感しました。
お話、ありがとうございました!
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