オリジナル絵本 インタビュー
『家具ものがたり Tales of Furniture』
/ 家のあちこちにある家具のつぶやきによって描かれた、 /
家族の穏やかな日常生活。
家のなかにあるいろいろな家具が、それを使う家族をどのように見ているか? そんな興味深い視点から、一冊の絵本を作り上げたのがインテリアショップ「Karf」の企画担当、島田幾子さんです。ブログの記事として書いた文章に、画家で絵本作家の松田奈那子さんが絵をつけ、グラフィックデザイナーの都丸英一さんが彩色とデザインを行いました。それぞれの家具のつぶやきのなかに、家具とともに暮らす家族の穏やかな日常生活が描かれています。作者の島田さんに、制作に関するいろいろなお話をうかがいました。
ブログを書き始めたのですが、そのなかで家具のことを書こうと思いつき、
家にあるテーブルが家族や暮らしのことを
つぶやくという話ができたんです。
まず、発行元である「株式会社カーフ」は、どのような事業をされている会社なのですか。
私たち「株式会社カーフ」はインテリアショップを運営しておりまして、東京都目黒区の「karf」と、茨城県つくば市にカフェを併設したヴィンテージ専門の「Blackboard」の2店舗があります。夫が代表を務め、私は店舗のことや、会社の方向性、カフェのプロデュースなど、いろいろな企画を担当しています。
インテリアショップで、どうして絵本を作ろうと思われたのでしょうか。
この絵本のストーリーは私のブログから生まれたものです。4年前から、住まい、暮らし、子育てといったテーマでブログを書き始めたのですが、そのなかで家具のことを書こうと思いつき、家にあるテーブルが家族や暮らしのことをつぶやくという話ができたんです。それがきっかけで、次はソファを語り手にしたものを書き、ベッド編、サイドボード編など全部で7本になったときに、これを一冊にまとめてみたいなという気持ちになりました。
ブログで書いたお話をまとめるのに、なぜ絵本というかたちを選ばれたのですか。
ブログでは、自宅で使用している家具の写真を文章に添えて掲載していたのですが、せっかくまとめるんだったら、絵本にしたらどうかと考えました。絵本って私のイメージではお子さんから大人まで気軽に手に取ってもらえそうな雰囲気をまとっているんですよね。それと本のなかで語られることが、絵本にするとそれほど押しつけがましくならないのではないかと思ったんです。
この絵本のテーマはどのようなことだったのでしょうか。
ブログにもよく書いているのですが、「身近なものに対する愛おしさ」がテーマのひとつになっています。家族だったり、家や、暮らしのなかにある家具や物だったり、人ってそういう環境から作られているなと感じていて、そこがきっちりしていれば、どんなことがあっても幸せでいられると思っています。たとえば、外で多少イヤな気持ちになっても、家に帰ればホッとしたり、リセットできたりするのは、そこに自分を大事にしてくれる家族や、その人自身の暮らしがあるからだと思うんです。絵本に出てくる家具たちは、本当に他愛ないことをつぶやいていますが、これを読んだ人が、日常の暮らしについて、少しでも気付いてくれたらいいな、という気持ちで書きました。また、私は家具をずっと扱ってきているので、どのように家具とつき合っていくと気持ちよく過ごせるかという、家具のお手入れといったちょっとした情報も、裏テーマで盛りこんでいます。
この本は、パッケージとして絵本というかたちを選びましたが、
「読み物」として楽しんでいただけたらなと思っています。
家具がおしゃべりするという空想の世界で、島田さんご自身、家具の声などもイメージできたりしたのでしょうか。
そうですね。モデルになった家具たちは、ほぼカーフのオリジナル商品で、実際に自宅で使っている家具です。実は、松田さんに絵をお願いするときに、世界観を理解していただきやすいかなと思い、家具たちのキャラクターや、何歳ぐらいでどんな性格ですとか、設定を細かく書いた表をお渡ししました。松田さんがそれをどう表現してくれるんだろうという楽しみもあったのですが、キャラクター設定はかなりしっかりイメージしながらお話を書いているので、そこは共有させていただきました。
絵を担当された松田奈那子さんとは、どのようなご関係だったのでしょうか。
ずいぶん前になりますが、とある画廊で松田奈那子さんの絵に出会ったのがお付き合いの始まりです。その後は数年に一度、松田さんの絵の個展をkarfで開催するような親しい関係になりました。松田さんは現在たくさんの絵本を出していらっしゃいますが、出会った当時の作品は渋い色味の画風で、私のなかで絵本作家というイメージはありませんでした。ですが、絵本の絵を誰に描いてもらおうかと考えたときに、やはり松田さんの顔が浮かんだんです。それに、松田さんなら絵本制作を経験されているのでいろいろお聞きできるし、描いてほしい絵のイメージも伝わりやすいかなと思ったのが、お願いした大きな理由です。
彩色は白を残した塗り方になっていますが、それは何か特別に注文されたのでしょうか。
色をつけたのは都丸さんという、弊社のデザイン関係をずっとやってもらっている方です。最初に色のサンプルや塗り方を、何点か色んなパターンで出していただいて、最終的にたどり着いたのがこのかたちだったんです。やっぱり塗りつぶしよりも、ちょっと隙間が見える軽やかな着彩の仕方の方が、この絵本には合っているよねという話で決まりました。色についても、家具をそのままの色にすると全部茶色っぽくなってしまうので、テーブルが赤だったり、キャビネットが青だったり、現実ではあまりない色を提案してくれたのがすごくよかったです。家具がかわいく見えたり、楽しそうに感じたりするのは都丸さん力ですね。
絵本を作るときに「ガップリ!の絵本」を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
検索してすぐヒットしたのが「ガップリ!の絵本」さんでした。注目したのは絵本に特化している点です。スペシャリストというか、私の希望や相談事に対して、解決してくれるのではないかという期待が持てたので選びました。
絵本の仕様に関しては、どのようなご希望があったのですか。
絵本の形については、長方形よりも正方形のほうが柔らかい印象があるので、最初から正方形に決めていました。また、表紙も光沢のない紙がいいとか、見返しに絵をあしらいたいといった装丁のイメージも初めからありました。見返し印刷に関しては、そこで最初に絵本の世界観が表現できたらいいなと思ったんです。あとこれは「ガップリ!の絵本」さんを選んだ理由のひとつにもなるのですが、絵本は厚いハードカバーの表紙という印象が強かったので、ハードカバー以外は考えていませんでした。
ブログの原稿を基にしているので、60ページというページ数になったかと思いますが、絵本にするときに困ったことなどありませんでしたか。
最初は上下巻の2冊に分けようと思いましたが、コストが上がることもあり、どうしようかと悩みました。それで、本屋さんに絵本を見にいって、自分の絵本がどのぐらいの厚さになるかイメージしたのですが、1冊でもそれほど分厚くなるわけではないと思い、最終的には1冊にすることに決めました。この本は、パッケージとして絵本というかたちを選びましたが、やはり子どもが読むような薄い絵本とは違い、「読み物」として楽しんでいただけたらなと思っています。
絵本を制作するうえで、特に大変だったことなどはございますか。
それぞれの家具の話の最初を、見開きの扉にして、左ページには英語のフレーズを乗せたデザイン、右ページには話の番号と家具の名前を載せると決めていました。ですから、前のパートの話が左ページで終わってしまうと、扉が見開きにならず困るんです。それで、それぞれの話が右ページで終わるように、さらに全体の文章が決められたページ数にうまく収まるように、ページごとの構成を調整するのがとても大変でした。
形にすることの大切さを実感しています。
本ってネットと違い、そこに存在する限り、
誰かが手に取って一人歩きして行ってくれますからね。
絵本が完成したときの感想はいかがでしたか。
最初の漠然とした構想から3年ぐらい経って、ようやく形になったという達成感のようなものがあり、形にすることの大切さを実感しています。本ってネットと違い、そこに存在する限り、誰かが手に取って一人歩きして行ってくれますからね。しかしその一方で、でき上がるともっともっと展開したくなり、ここがゴールではなかったなと感じています。
今回の印刷では、高精細なデジタル印刷機を使用したのですが、仕上がりをご覧になっていかがでしたか。
とてもきれいだと思いました。だいたい印刷物の色って、画面で見ていた色と違うものになって、「あれ?」ってなることが多いのですが、本当に画面の色そのものに近いイメージで、逆にびっくりしました。最高です。
完成した絵本はどのようなかたちで活用されていらっしゃるのでしょうか。
現在は最初に紹介した「karf」「Blackboardつくば店」のショップと、カーフのオンラインショップで販売しています。また今回、2店舗で同時に出版記念展示会を開催しました。「Blackboard」にはギャラリーにもなるスペースがあるので、絵本の世界に入りこめるように、絵本の表紙やページを拡大したパネルの展示を行いました。会場では、ものがたりの朗読をずっと流していたんですよ。音からも絵本の世界観を作っていけたら面白いかなと思ったんです。「karf」のほうは、絵本の見返しに描かれている絵を拡大したパネルや、絵本に登場した家具のミニチュアを作って展示しました。
それは、すごいですね!
やはりインテリアショップなので、家具が大きいものですから、「本を作りました」って棚に並べて飾っても気づかれないと思ったんです。それで、パネルとか作っていろいろ展開していたら、ちょっと楽しくなってきて、「Blackboard」でカフェもやっているので、家具のクッキーまで作ってしまいました。
展示会をご覧になったお客さまや、絵本を読んだ方からの反応はいかがでしたか。
展示会に来てくださった方は、「やっぱりオシャレだね」とか、この絵本がただ本屋さんに並んでいても伝わりにくいことから、「インテリアショップで販売しているからこそ価値がある」と言ってくださった方もいます。また、絵本を読んだ感想には、「本来しゃべらないはずの家具が、家具としての自分の気持ちを語ることで、家具の視線になって今まで気がつかなかったところを意識した」とか、「これからはきれいに掃除してあげようと思った」「今までぞんざいに扱っていてごめんね、という気持ちが湧いてきた」という、少し反省するようなコメントが多いですね。家具って、自分の身体を預けたり、肌にも触れたりして、結構、人との密着度が高いんです。ですから、家具は大事に選んでもらいたいですし、長く付き合っていただきたいという思いがあります。
今後の展開も何か考えていらっしゃるのでしょうか。
まだ実行には移していないのですが、インテリアショップとしてのブランディングのひとつとして、この絵本をきっかけに、いろいろな人とお部屋や家族のことについて話したりできるような、サロン的なものにつなげていけたらいいなと考えています。
最後に、「ガップリ!の絵本」をご利用いただいた感想をお願いいたします。
イメージどおりの絵本ができ上がり、ありがとうございますという気持ちですね。発注を決める前に「ガップリ!の絵本」さんの会社を一度訪問したいと思い、デザインと彩色を担当した都丸さんと一緒にうかがったのですが、Webサイトに書いてあったとおり、リアルでご相談ができたので、そこも選んだ決め手になったかと思います。そのときは、ほかの方が作った絵本をたくさん見せていただいて、「こういうふうにすると、こうなるんだ」という事例がたくさんあったので、とても心強かったです。
自分の家にある家具たちも、どんなことを感じたり、話していたりするんだろうと想像すると
家具が愛おしくなりますね。
お話、ありがとうございました。
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家族の穏やかな日常生活。
家のなかにあるいろいろな家具が、それを使う家族をどのように見ているか? そんな興味深い視点から、一冊の絵本を作り上げたのがインテリアショップ「Karf」の企画担当、島田幾子さんです。ブログの記事として書いた文章に、画家で絵本作家の松田奈那子さんが絵をつけ、グラフィックデザイナーの都丸英一さんが彩色とデザインを行いました。それぞれの家具のつぶやきのなかに、家具とともに暮らす家族の穏やかな日常生活が描かれています。作者の島田さんに、制作に関するいろいろなお話をうかがいました。
ブログを書き始めたのですが、そのなかで家具のことを書こうと思いつき、
家にあるテーブルが家族や暮らしのことを
つぶやくという話ができたんです。
まず、発行元である「株式会社カーフ」は、どのような事業をされている会社なのですか。
私たち「株式会社カーフ」はインテリアショップを運営しておりまして、東京都目黒区の「karf」と、茨城県つくば市にカフェを併設したヴィンテージ専門の「Blackboard」の2店舗があります。夫が代表を務め、私は店舗のことや、会社の方向性、カフェのプロデュースなど、いろいろな企画を担当しています。
インテリアショップで、どうして絵本を作ろうと思われたのでしょうか。
この絵本のストーリーは私のブログから生まれたものです。4年前から、住まい、暮らし、子育てといったテーマでブログを書き始めたのですが、そのなかで家具のことを書こうと思いつき、家にあるテーブルが家族や暮らしのことをつぶやくという話ができたんです。それがきっかけで、次はソファを語り手にしたものを書き、ベッド編、サイドボード編など全部で7本になったときに、これを一冊にまとめてみたいなという気持ちになりました。
ブログで書いたお話をまとめるのに、なぜ絵本というかたちを選ばれたのですか。
ブログでは、自宅で使用している家具の写真を文章に添えて掲載していたのですが、せっかくまとめるんだったら、絵本にしたらどうかと考えました。絵本って私のイメージではお子さんから大人まで気軽に手に取ってもらえそうな雰囲気をまとっているんですよね。それと本のなかで語られることが、絵本にするとそれほど押しつけがましくならないのではないかと思ったんです。
この絵本のテーマはどのようなことだったのでしょうか。
ブログにもよく書いているのですが、「身近なものに対する愛おしさ」がテーマのひとつになっています。家族だったり、家や、暮らしのなかにある家具や物だったり、人ってそういう環境から作られているなと感じていて、そこがきっちりしていれば、どんなことがあっても幸せでいられると思っています。たとえば、外で多少イヤな気持ちになっても、家に帰ればホッとしたり、リセットできたりするのは、そこに自分を大事にしてくれる家族や、その人自身の暮らしがあるからだと思うんです。絵本に出てくる家具たちは、本当に他愛ないことをつぶやいていますが、これを読んだ人が、日常の暮らしについて、少しでも気付いてくれたらいいな、という気持ちで書きました。また、私は家具をずっと扱ってきているので、どのように家具とつき合っていくと気持ちよく過ごせるかという、家具のお手入れといったちょっとした情報も、裏テーマで盛りこんでいます。
この本は、パッケージとして絵本というかたちを選びましたが、
「読み物」として楽しんでいただけたらなと思っています。
家具がおしゃべりするという空想の世界で、島田さんご自身、家具の声などもイメージできたりしたのでしょうか。
そうですね。モデルになった家具たちは、ほぼカーフのオリジナル商品で、実際に自宅で使っている家具です。実は、松田さんに絵をお願いするときに、世界観を理解していただきやすいかなと思い、家具たちのキャラクターや、何歳ぐらいでどんな性格ですとか、設定を細かく書いた表をお渡ししました。松田さんがそれをどう表現してくれるんだろうという楽しみもあったのですが、キャラクター設定はかなりしっかりイメージしながらお話を書いているので、そこは共有させていただきました。
絵を担当された松田奈那子さんとは、どのようなご関係だったのでしょうか。
ずいぶん前になりますが、とある画廊で松田奈那子さんの絵に出会ったのがお付き合いの始まりです。その後は数年に一度、松田さんの絵の個展をkarfで開催するような親しい関係になりました。松田さんは現在たくさんの絵本を出していらっしゃいますが、出会った当時の作品は渋い色味の画風で、私のなかで絵本作家というイメージはありませんでした。ですが、絵本の絵を誰に描いてもらおうかと考えたときに、やはり松田さんの顔が浮かんだんです。それに、松田さんなら絵本制作を経験されているのでいろいろお聞きできるし、描いてほしい絵のイメージも伝わりやすいかなと思ったのが、お願いした大きな理由です。
彩色は白を残した塗り方になっていますが、それは何か特別に注文されたのでしょうか。
色をつけたのは都丸さんという、弊社のデザイン関係をずっとやってもらっている方です。最初に色のサンプルや塗り方を、何点か色んなパターンで出していただいて、最終的にたどり着いたのがこのかたちだったんです。やっぱり塗りつぶしよりも、ちょっと隙間が見える軽やかな着彩の仕方の方が、この絵本には合っているよねという話で決まりました。色についても、家具をそのままの色にすると全部茶色っぽくなってしまうので、テーブルが赤だったり、キャビネットが青だったり、現実ではあまりない色を提案してくれたのがすごくよかったです。家具がかわいく見えたり、楽しそうに感じたりするのは都丸さん力ですね。
絵本を作るときに「ガップリ!の絵本」を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
検索してすぐヒットしたのが「ガップリ!の絵本」さんでした。注目したのは絵本に特化している点です。スペシャリストというか、私の希望や相談事に対して、解決してくれるのではないかという期待が持てたので選びました。
絵本の仕様に関しては、どのようなご希望があったのですか。
絵本の形については、長方形よりも正方形のほうが柔らかい印象があるので、最初から正方形に決めていました。また、表紙も光沢のない紙がいいとか、見返しに絵をあしらいたいといった装丁のイメージも初めからありました。見返し印刷に関しては、そこで最初に絵本の世界観が表現できたらいいなと思ったんです。あとこれは「ガップリ!の絵本」さんを選んだ理由のひとつにもなるのですが、絵本は厚いハードカバーの表紙という印象が強かったので、ハードカバー以外は考えていませんでした。
ブログの原稿を基にしているので、60ページというページ数になったかと思いますが、絵本にするときに困ったことなどありませんでしたか。
最初は上下巻の2冊に分けようと思いましたが、コストが上がることもあり、どうしようかと悩みました。それで、本屋さんに絵本を見にいって、自分の絵本がどのぐらいの厚さになるかイメージしたのですが、1冊でもそれほど分厚くなるわけではないと思い、最終的には1冊にすることに決めました。この本は、パッケージとして絵本というかたちを選びましたが、やはり子どもが読むような薄い絵本とは違い、「読み物」として楽しんでいただけたらなと思っています。
絵本を制作するうえで、特に大変だったことなどはございますか。
それぞれの家具の話の最初を、見開きの扉にして、左ページには英語のフレーズを乗せたデザイン、右ページには話の番号と家具の名前を載せると決めていました。ですから、前のパートの話が左ページで終わってしまうと、扉が見開きにならず困るんです。それで、それぞれの話が右ページで終わるように、さらに全体の文章が決められたページ数にうまく収まるように、ページごとの構成を調整するのがとても大変でした。
形にすることの大切さを実感しています。
本ってネットと違い、そこに存在する限り、
誰かが手に取って一人歩きして行ってくれますからね。
絵本が完成したときの感想はいかがでしたか。
最初の漠然とした構想から3年ぐらい経って、ようやく形になったという達成感のようなものがあり、形にすることの大切さを実感しています。本ってネットと違い、そこに存在する限り、誰かが手に取って一人歩きして行ってくれますからね。しかしその一方で、でき上がるともっともっと展開したくなり、ここがゴールではなかったなと感じています。
今回の印刷では、高精細なデジタル印刷機を使用したのですが、仕上がりをご覧になっていかがでしたか。
とてもきれいだと思いました。だいたい印刷物の色って、画面で見ていた色と違うものになって、「あれ?」ってなることが多いのですが、本当に画面の色そのものに近いイメージで、逆にびっくりしました。最高です。
完成した絵本はどのようなかたちで活用されていらっしゃるのでしょうか。
現在は最初に紹介した「karf」「Blackboardつくば店」のショップと、カーフのオンラインショップで販売しています。また今回、2店舗で同時に出版記念展示会を開催しました。「Blackboard」にはギャラリーにもなるスペースがあるので、絵本の世界に入りこめるように、絵本の表紙やページを拡大したパネルの展示を行いました。会場では、ものがたりの朗読をずっと流していたんですよ。音からも絵本の世界観を作っていけたら面白いかなと思ったんです。「karf」のほうは、絵本の見返しに描かれている絵を拡大したパネルや、絵本に登場した家具のミニチュアを作って展示しました。
それは、すごいですね!
やはりインテリアショップなので、家具が大きいものですから、「本を作りました」って棚に並べて飾っても気づかれないと思ったんです。それで、パネルとか作っていろいろ展開していたら、ちょっと楽しくなってきて、「Blackboard」でカフェもやっているので、家具のクッキーまで作ってしまいました。
展示会をご覧になったお客さまや、絵本を読んだ方からの反応はいかがでしたか。
展示会に来てくださった方は、「やっぱりオシャレだね」とか、この絵本がただ本屋さんに並んでいても伝わりにくいことから、「インテリアショップで販売しているからこそ価値がある」と言ってくださった方もいます。また、絵本を読んだ感想には、「本来しゃべらないはずの家具が、家具としての自分の気持ちを語ることで、家具の視線になって今まで気がつかなかったところを意識した」とか、「これからはきれいに掃除してあげようと思った」「今までぞんざいに扱っていてごめんね、という気持ちが湧いてきた」という、少し反省するようなコメントが多いですね。家具って、自分の身体を預けたり、肌にも触れたりして、結構、人との密着度が高いんです。ですから、家具は大事に選んでもらいたいですし、長く付き合っていただきたいという思いがあります。
今後の展開も何か考えていらっしゃるのでしょうか。
まだ実行には移していないのですが、インテリアショップとしてのブランディングのひとつとして、この絵本をきっかけに、いろいろな人とお部屋や家族のことについて話したりできるような、サロン的なものにつなげていけたらいいなと考えています。
最後に、「ガップリ!の絵本」をご利用いただいた感想をお願いいたします。
イメージどおりの絵本ができ上がり、ありがとうございますという気持ちですね。発注を決める前に「ガップリ!の絵本」さんの会社を一度訪問したいと思い、デザインと彩色を担当した都丸さんと一緒にうかがったのですが、Webサイトに書いてあったとおり、リアルでご相談ができたので、そこも選んだ決め手になったかと思います。そのときは、ほかの方が作った絵本をたくさん見せていただいて、「こういうふうにすると、こうなるんだ」という事例がたくさんあったので、とても心強かったです。
自分の家にある家具たちも、どんなことを感じたり、話していたりするんだろうと想像すると
家具が愛おしくなりますね。
お話、ありがとうございました。
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