オリジナル絵本インタビュー
『SPICE Illustrator PHI's Artworks Portfolio』

PHI様製作のオリジナル絵本『SPICE Illustrator PHI's Artworks Portfolio』

/ 「カートゥーンスタイル」のイラストが並ぶ、 /
プロのイラストレーターのポートフォリオ。

「カートゥーンスタイル」というコミカルな欧米アニメーション風の色鮮やかなイラストを中心に、64ページにわたって多彩な作品が掲載されたポートフォリオです。制作者であるイラストレーターのPHIさんは、ポートフォリオを作るのがはじめてでしたが、構成やデータ作成などの作業をすべてひとりで行い、苦労の末に完成させました。PHIさんにインタビューし、ポートフォリオを作ろうと思ったきっかけや、『SPICE』というタイトルの由来など、さまざまなお話をうかがいました。

今まで営業用にポートフォリオを作って配ったりしたことはありませんでしたが、支援金をいただけるのであれば作ってみようと思い、今回制作を決めました。

PHI（ピーエイチアイ）さんは、ふだん、どのようなことをされているのでしょうか。

フリーランスでイラストレーターをしています。ふだんはこのポートフォリオに載っているような絵柄のイラストを描いて仕事をする一方、別名義でソーシャルゲームのイラストなども担当しています。

▲ポートフォリオを制作したイラストレーターのPHIさん

PHIさんのイラストには懐かしさを感じるのですが、このようなイラストは何というのでしょうか。

「カートゥーンスタイル」のイラストと言わせていただいています。「カートゥーンスタイル」というのは、欧米の子どもたちが見るような、ちょっとコミカルでポップなアニメーション風の絵柄と説明するのが一番近いと思います。もともと描いていた絵柄が、日本風よりは西洋風のコミカルなスタイルにマッチしたようで、大学時代からすでに描いていました。

▲PHIさんの作風がわかる作品のひとつ

大学生の時にはもうこのスタイルだったのですね。イラストはどこで学ばれたのですか。

昔から絵を描くのが好きで、美術系の高校に入学して、最初はデザインコースで学んでいました。その時の先生は恩師として今でも尊敬しているのですが、絵の技術というよりはアイデアの出し方を教えてくれて、私のイラストの特長を伸ばしてくれました。その後、大学では、それまでとまったく方向性が違う日本画を専攻して、今回のポートフォリオの表紙のような絵や、リアルな絵などを日本画で表現していました。卒業後はそのままフリーのイラストレーターになり、今に至っています。でも、最初のころは仕事がなくて大変でした。

卒業後フリーランスになるとは、すごい勇気ですね。それで今回、ポートフォリオを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

2020年、2021年と、国からのアーティストに対する支援事業があり、そのなかにコロナ禍でアーティスト活動を継続させるのが難しい場合に、支援金を出すというものがあったんです。今までポートフォリオを作って、ギャラリーやデザイン会社に配ったりしたことはありませんでしたが、支援金をいただけるのであれば作ってみようと思い、今回制作を決めました。

このポートフォリオは、「ガップリ！の絵本」で製作されましたが、サイトはどのようにして探されたのでしょうか。

ハードカバー製本が夢だったので、「ハードカバー製本　印刷」で多分検索したと思います。その検索結果を一社一社見ていくなかで、絵本制作という名目のサービスでしたが、「ガップリ！の絵本」さんはいろいろと相談に乗っていただけそうな感じがあり、いいなと思いました。私は大阪在住なのですが、「ガップリ！の絵本」さんがある東京にも仕事でちょこちょこ行くので、もし何か困った時に直接会って相談できるかなと思って製作をお願いしました。

ひとつの制作物を料理に見立てて考えた時に、自分の絵が前面に出なくても、
大事な料理に入っているスパイスのひとつになればいいと思い、題名も『SPICE』にしたのです。

このポートフォリオに、テーマやコンセプトのようなものはありますか。

▲絵を描く料理人のイラスト

基本的には作品をバーッと並べてまとめたものなのですが、コンセプトというか、こういう気持ちで作りましたというのはあります。このポートフォリオの表紙の絵に描かれた料理人は、料理を作っているように見えて、じっくり見ると絵を描いているしぐさをしています。これは、私の絵は大きな制作物を作るうえでの材料でしかないという考えを表しています。ひとつの制作物を料理に見立てて考えた時に、自分の絵が前面に出なくても、大事な料理に入っているスパイスのひとつになればいいと思い、題名も『SPICE』にしたのです。

それで、ポートフォリオのなかに、テイストの違うバッグやＴシャツ、キーチェーンなどのグッズや、CDジャケットといった制作物もあったのですね。

自分が飽きてしまうということもあり、ひとつの絵柄を追求するというよりは違う絵も描きたいとウロウロしていたらこうなったという感じです。どちらかというとひとつの絵を追求して描かれている方のほうが、しっかりとお仕事をいただけるイメージはあるのですが、いろいろな絵が描けるのでいろいろな仕事を頼みやすいと言ってくださる方もいらっしゃいます。私自身は、ストレスなくイラストを描き続けるとなると、このほうが合っているのかと思っています。

▲PHIさんがデザインしたステッカーやマグカップなどのオリジナルグッズ

ポートフォリオを制作するにあたって、とくに大変だった点はありますか。

私は本格的なイラスト本の編集をしたことがなく、画像編集にIllustratorを使うのもほぼはじめてでした。なので、デザイナーをされていた方からIllustratorの説明やアドバイスをしてもらいながら、すべて自分で行ったのですが、やはりデータ制作に時間がかかり、なかなかしんどかったです。ただし、今回の制作でIllustratorにはすごく慣れて、以前の２倍くらいは使えるようになりました。あとは、どのページにどの作品を掲載するかのレイアウトが全然決まらなくて大変でしたね。コンビニとかにあるプリンターで作品のデータを原寸大で印刷して、文字の大きさや、おかしなところはないかなどの確認をして決めていきました。

いろいろな作品が収録されていますが、ポートフォリオ全体の構成に関しては、何かこだわりはありますか。

いちばん最初は、実績としてクライアントワークを載せました。そのなかでも絵柄の違いがありますので、できるだけ見る方が驚かないように、ほんとうに同じ人が描いているのかと疑問を持たれないように、その後のページでは個人制作の作品を載せています。背景が真っ黒の場合はできるだけ並べたり、雰囲気のある作品は固めたりして、制作年代はバラバラなのですが、絵柄の違いを考慮しつつ構成を組み立てました。

印刷や製本などでは、何かこだわった点はありますか。

支援事業でお金を出していただけたので、今までできなかったホワイト印刷や箔押し加工(空押し)など、やりたいことをやってみました。

▲ホワイトトナーで色のついた見返し用紙に白文字を印刷

一目見て楽しいのはもちろんですが、人間でも動物でも、それ以外のものでも、
ストーリー性を感じてもらえる作品をこれからも描いていければと思います。

ポートフォリオが完成して、手元に届いた時の感想はいかがでしたか。

やはりうれしかったです。納品前サンプルは送っていただいて見ていたのですが、その時は箔押し加工などが最終の形にはなっていませんでした。ですから、それらがすべて入って完成したものが届いた時は「おおっ！」となりました。

▲表紙右上の箔押し紙の破れを立体的に表現（左：全体図、右：箔押しアップ）

ポートフォリオをすでにご覧になった方たちもいらっしゃると思いますが、反応はいかがでしたでしょうか。

物としてけっこう大きめで、手に取った時にずっしりと感じるので、「ガッツリだね」と言われました。箔押し加工やホワイト印刷の評判もとてもいいです。一つひとつしっかり見てもらって、手触りのよさを評価されたり、とくに色については「きれいに出ている」と言っていただけたりしました。

ポートフォリオは、どのように活用されているのでしょうか。企業やギャラリーに配られたりしているのですか。

▲イベントに展示されたポートフォリオ

まだ、あまり配れていませんが、そのつもりです。ほかには、コミック関連のイベントの場などでお仕事をいただくこともあるので、そういったイベントに出展する時に持って行って、一般のお客さまに自由に見ていただいています。お客さまからは「欲しいです、いくらで売っていますか？」という声もいただくのですが、今回のポートフォリオは支援事業で制作したので、販売はできません。その代わりに、このポートフォリオを見た方から展示のお誘いやお仕事のご依頼がいただけるといいなと思っています。

次に作りたい作品の構想などはありますか。

一目見て楽しいのはもちろんですが、人間でも動物でも、それ以外のものでも、ストーリー性を感じてもらえる作品をこれからも描いていければと思います。日常生活の中でいろいろな発見があると思うのですが、見る人がちょっとおもしろがったり、何か考えたりができるような絵を描きたいですね。お仕事的には食べ物や雑貨関連の絵の依頼をいただきたいので、それを重点的に描いています。